会社を退職した後、失業手当をもらいながら(夫などの)扶養に入ることを予定している人も多いと思いますが、残念ながら失業手当をもらっている期間は扶養家族になれないケースが多いです。
そこで今回は、「失業手当をもらいながら扶養に入ることができるケース」と、失業手当をもらうべきか、扶養に入るべきか、迷っている人向けに「失業手当と扶養はどっちがお得なのか?(令和5年度版)」をまとめましたので、よろしければ参考にしてみてください。
失業手当と扶養の関係
社会保険(健康保険、厚生年金など)の扶養に入ることができる条件は、年収130万円未満です。
よって、「失業中で収入がないから、扶養に入れるでしょ!」と考えるのが一般的ですよね。
しかし、失業手当は税金面では収入としてカウントされませんが、社会保険の面では収入とみなされ、扶養に入れないケースがあります。
失業手当をもらいながら扶養に入れるケースとは?
協会けんぽの場合は、基本手当日額(雇用保険受給資格者証の「NO 19.」)が3,611円以下(年収130万円÷360日)であれば、失業手当をもらっていても扶養に入ることができます。(※加入している保険組合等で条件が異なります。)
基本手当日額を調べる方法は、こちらで解説しています。
▶ハローワークの失業手当はいくらもらえるの?支給額の計算方法を確認
このように基本手当日額が3,611円を超える場合は、失業手当を受給すると扶養に入ることができません。つまり、扶養に入れないということは、国民健康保険と国民年金に加入する必要があるということです。
ですが、「失業手当の支給期間中は扶養に入ることができない」ということなので、待機期間(7日)や給付制限(2ヶ月※)はどういう扱いになるのか?確認しておきましょう。
(※令和2年10月1日から給付制限が「2ヶ月」になりました!)
待機期間中(7日)は?
退職後、ハローワークで失業手当の受給手続きをすると、最初に7日の待機期間がありますが、この期間は失業手当が支給されない期間になるので、扶養に入ることは可能です。
ただし、離職理由が会社都合の場合は、待機期間(7日)満了の翌日から支給がスタートしますので、このケースでは、失業手当をもらい終わった後に扶養に入る手続きをすることをおススメします。
受給期間延長中は扶養に入れる?
妊娠や出産、病気やケガ等ですぐに働くことができない人は、失業手当の受給期間を延長することができますが、この受給期間延長中は、失業手当は支給されないので、扶養に入ることができます。
▶失業手当の受給期間延長はいつからいつまで?申請タイミングと期限を確認
給付制限2ヶ月間は?
離職理由が自己都合の場合は、7日間の待機期間後に2ヶ月間の給付制限がありますが、この(待機期間7日プラス)給付制限2ヶ月間は、失業手当は支給されないので、扶養に入ることができます。
自己都合退職した人の給付制限が「3ヶ月」→「2ヶ月」に!
令和2年(2020年)10月1日から自己都合で退職した人の給付制限が、これまでの「3ヶ月」から「2ヶ月」に短縮されました。(つまり、2020年10月1日以降に自己都合で退職された方は、1ヶ月早く失業手当が受給できるようになります。)
このように、退職後、失業手当をもらうまでは扶養に入り→失業手当をもらっている期間は扶養から外れ(国保+国民年金に加入)→失業手当の受給終了後に再び扶養に入るということが可能です。
私の勤務している会社では、上記の場合でも対応していますが、会社によっては、「扶養に入る→扶養を抜ける→再び扶養に入る」という手続きが負担になり、受付けてくれない場合もあると思いますので、事前に確認するようにしてください。
扶養に入ることができれば、国民健康保険料+国民年金を払う必要はありませんが、扶養に入らず失業手当を受給する場合は、国民健康保険料+国民年金を払う必要があります。
そこで、どちらがお得なのか?計算してみましたので、失業手当をもらうべきか、扶養に入るべきか、迷っている人がいたら参考にしてみてください。
失業手当と扶養はどっちがお得?
ここからは、次のモデルケースを使って解説していきます。
①失業手当の支給額を計算する
まず、Aさんがもらえる失業手当の総額を確認していきます。
失業手当の計算方法は「基本手当日額×所定給付日数」なので、4,887円×90日=439,830円
Aさんが扶養に入らず失業手当を申請した場合、3ヶ月間で総額439,830円がもらえるとこになります。
②国保と年金の額を計算する
続いて、扶養に入ることができない90日間(3ヶ月間)の国保と年金の保険料を確認していきます。
国保は1ヶ月あたり14,300円なので、14,300円×3ヶ月=42,900円
年金は1ヶ月あたり16,520円なので、16,520円×3ヶ月=49,560円
42,900円+49,560円=92,460円
Aさんが扶養に入らず、失業手当を申請した場合、扶養に入れない期間は92,460円の国保と年金を支払うことになります。
③差額を確認する
差額は、「失業手当-(国保+年金)」で計算することができますので、
439,830円-92,460円=347,370円
Aさんの場合は、扶養に入らず失業手当をもらった方が約34万円お得になりますね。
失業手当をもらい終えたあと扶養に入る場合は?
仮に、退職直後から失業手当をもらい終えるまで(Aさんの場合は約5ヶ月)扶養に入らず国保と国民年金保険料を払う場合は、
国保:14,300円×5ヶ月=71,500円
年金:16,520円×5ヶ月=82,600円
439,830円-(71,500円+82,600円)=285,730円
やはり、約28万円は、お得になる計算です。
このように、理想は「給付制限中は扶養に入る→失業手当の受給開始時に一旦扶養から抜ける→受給終了後に再び扶養に入る」ことですが、それが難しいという場合でも、退職後すぐに扶養に入るよりは、失業手当を受給した後に扶養に入る方がお得ということになります。
※実際の金額は保険の加入時期によって変わるため、あくまで目安としてください。また、失業手当を受給するためには、積極的に仕事を探すという条件もありますので、注意してください。
退職後の国民健康保険加入手続き
▶退職・扶養から外れたときの国保加入手続き!必要書類と期限を確認
退職後に扶養に入る手続き
▶退職後に扶養に入る条件と手続方法!扶養中に収入がオーバーしたら?
最後に
扶養に入るときの手続きは、会社が年金事務所等に「被扶養者異動届」を提出することになっていますが、そのとき失業や離職が理由で扶養に入る場合は「離職票」のコピーを添付することになっています。
もし、扶養に入ったまま失業手当を受給して、その事実が発覚すると、さかのぼって国保&国民年金保険料を納めることになります。また、会社側にも手続き等で迷惑がかかりますので注意してくださいね。
こちらの記事では、退職したときに行う手続きを一覧にまとめていますので、よろしければあわせて参考にしてみてください。
▶失業・退職したときの(失業手当、年金免除、国保軽減)手続きまとめ!