平成29年1月1日から「雇用保険の適用拡大」で、65歳以上の人も雇用保険に加入できるようになり、(6ヶ月以上加入で)何度でも失業手当を受給できるようになりました。
私の勤務している会社では、今のところ65歳以上の方の再就職はありませんが、今後のためにも「高年齢求職者給付金」について、ちょっと調べてみました。
中でも個人的に気になったのが「いくらもらえるのか?」です。
そこで、今回は65歳以上の失業手当「高年齢求職者給付金」は、いつ?いくらもらえるのか?計算方法や、受給までの流れについてハローワークの窓口で確認してきました。また、ハローワークの窓口で自己都合退社の「給付制限」について、ちょっとお得な情報を入手したので、そちらもあわせて参考にしてみてください。
65歳以上の雇用保険
先ほどもちょっと触れましたが、平成29年1月1日から65歳以上の人も雇用保険に加入することができるようになり、65歳以上で再就職した場合でも、6ヶ月以上雇用保険に加入すれば、何度でも失業手当(高年齢求職者給付金)を受給することができようになりました。
以前との違いは、下の図で確認することができます。
詳しくはこちらの記事にまとめていますので、よろしければ参考にしてみてください。
▶高年齢求職者給付金:65歳定年退職後に再雇用された場合はもらえるの?
それでは、65歳以上で失業した場合、「高年齢求職者給付金」はいくらもらえるのか?計算方法を確認していきましょう。
高年齢求職者給付金はいくらもらえるの?
まず、高年齢求職者給付金の支給額はどのように決まるのか?についてですが、支給される額は、下記のとおり雇用保険に加入していた期間で変わってきます。
雇用保険に加入していた期間 | 支給される額 |
1年以上ある場合 | 基本手当日額×50日 |
1年未満の場合(※6ヶ月以上の加入要) | 基本手当日額×30日 |
つまり、「基本手当日額」がわかれば高年齢求職者給付金の支給額もわかることになりますね。
基本手当日額とは、1日あたりもらえる失業手当の額です。
既に雇用保険受給資格者証をお持ちの方は、こちらで確認することができます。
<雇用保険受給資格者証>
ただし、基本手当日額には上限と下限が設定されていますので、以下の金額を上回る(下回る)場合は、上限額(下限額)で計算するようにしてください。
上限額 | 7,065円 |
---|---|
下限額 | 2,295円 |
(※令和6年8月1日~令和7年7月31日までの金額です。)
雇用保険受給資格者証をお持ちでない方は、このあとの計算方法を参考にしてみてください。
高年齢求職者給付金支給額の計算方法
高年齢求職者給付金は、次の①~③の順に計算していきます。
①「賃金日額」を計算する
↓
②「基本手当日額」を計算する
↓
③「高年齢求職者給付金」の支給額を計算する
それでは、順番に確認していきましょう。
①賃金日額を計算する
賃金日額は次の計算式を使って求めます。
ここでの給与とは、ボーナスを除き、残業代、通勤手当、住宅手当など各種手当を含んだ金額です。社会保険料(健康保険・厚生年金など)や税金などを差し引く前の金額ですね。
例えば、退職前の6ヶ月間の給与が月額20万円だった場合は、(20万円×6ヶ月)÷180=6,666円(1円未満切り捨て)
賃金日額は6,666円です。
賃金日額にも上限額・下限額が設定さています。計算で出た金額が、以下の上限額(下限額)を超えている(下回る)場合は、上限額(下限額)を使って計算を進めていきます。
上限額 | 14,130円 |
---|---|
下限額 | 2,869円 |
(※令和6年8月1日~令和7年7月31日までの金額です。)
②基本手当日額を計算する
続いて、「基本手当日額」を計算していきます。
基本手当日額は次の計算式で求めます。
ここでの「給付率」とは、①で計算した「賃金日額」を、下の表に当てはめて確認することができます。
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,869円以上5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上12,790円以下 | 80%~50% | 4,160円~6,395円 |
12,790円超14,130円以下 | 50% | 6,395円~7,065円 |
14,130円超~ | – | 7,065円(上限額) |
(※令和6年8月1日~令和7年7月31日までの金額です。)
例えば、賃金日額が「4,500円」だった場合は、賃金日額「2,869円以上5,200円未満」の範囲内になりますので、給付率「80%」を使って計算していきます。
4,500円×80%=3,600円
つまり、基本手当日額は3,600円となります。
続いて、賃金日額が「10,000円」のケースも確認してみましょう。
先ほど同様、表に当てはめて給付率をみると「80%~50%」となっていますね。
0.8×10,000円=8,000円
-0.3×{(10,000円-5,200)÷7,590}×10,000円=-1,897(1円未満切り捨て)
8,000円-1,897円=6,103円
基本手当日額は6,103円となります。
(※賃金日額の上限額は14,130円なので、賃金日額が14,131円~の場合は、基本手当日額は7,065円となります。)
③高年齢求職者給付金の支給額を計算する
高年齢求職者給付金の支給額は、②で計算した「基本手当日額」に支給日数の「50日」または「30日」をかけて求めることができます。
※「50日」か「30日」は、雇用保険に加入していた期間(1年以上か1年未満)で決まるということでしたね。
それでは、計算例を見ながら支給額を確認してみましょう。
計算例で支給額を確認
①賃金日額
(25万円×6ヶ月)÷180=8,333円
②基本手当日額
0.8×8,333円=6,666円
-0.3×{(8,333円-5,200)÷7,590}×8,333円=-1,031(1円未満切り捨て)
6,666円-1,031円=5,635円
③高年齢求職者給付金の支給額
5,635円×50日=281,750円
Aさんの高年齢求職者給付金の支給額は、281,750円です。
高年齢求職者給付金はいつもらえるの?支給までの流れを確認
高年齢求職者給付金の支給方法は、一般の被保険者(65歳未満)の失業手当のように、4週間ごとに1回の認定日はなく、初回の認定日後に一括支給されることになっています。
手続きと支給までの流れを確認してみましょう。
自己都合退社の場合、通常の失業手当と同様に7日間の待機期間後に「2ヶ月間(または3ヶ月)の給付制限」が発生しますが、前職を辞めた理由が「体力的な問題」であれば、「給付制限なし」の扱いで処理をしてくれるそうです。
ハローワークで求職の申込をすると受給資格決定の面接がありますが、その際に退職理由を「体力的にしんどかった….」にすると、自己都合退社でも「給付制限なし」で高年齢求職者給付金を受給することができるということですね。
(本日、「ハローワーク飯田橋」で確認した内容です。)
ということで、「給付制限なし」の場合、高年齢求職者給付金が入金されるまでの期間は、受給資格の決定を受けてから(待機7日⇒失業認定まで約3週間⇒入金まで約1週間)約1ヶ月となります。(※実際は、失業認定後⇒入金まで2~3日で振り込まれることが多いです。)
▶65歳以上の雇用保険「高年齢求職者給付金」は年金と併給できる?
※原則、年金と失業手当(基本手当)は併給できないことになっていますが、65歳の誕生日の前々日までに退職して、65歳になってから失業手当(基本手当)の申請をすれば、年金と失業手当(基本手当)の両方を同時に受給することができます。
「失業手当(基本手当)」の場合は、給付日数が最低でも90日分~と「高年齢求職者給付金」の給付日数(30日分~50日分)と比べると大きな差があるため、退職金等に影響がない場合は、65歳になる前(誕生日の前々日まで)に退職して、失業手当と年金の両方を同時に受給するという選択もアリだと思います。
最後に
今まで65歳以上になってから再就職した場合は、新たに雇用保険に加入することができず、無保険で働くことになっていましたが、「雇用保険の適用拡大」で、新たに雇用された65歳以上の人は、雇用保険に6ヶ月以上加入することで、失業手当を何度でも受給できるようになりました。
ただ、所定給付日数(失業手当がもらえる日数)は、以前と変わらず最大で50日(加入期間が1年未満は30日)が一括で支給されることになっています。65歳未満の一般被保険者の場合は最低でも90日ですから、格差が大きいのは変わりませんね。