今回は、会社を退職した人、倒産やリストラ等で失業してしまった人、事業を辞めた人が年金の免除を受けるためにはどうすればいいのか?年金事務所で確認してみました。

また、こちらの記事では、年金免除を受けるときの所得条件や申請方法、免除を受けると将来もらえる年金にどう影響するのか?についても確認することができますので、よろしければ参考にしてみてください。

退職・失業したときの年金免除制度とは

失業 退職 年金 免除

会社を退職した人やリストラ等で失業してしまった人、事業を辞めた人は、収入がなくなり年金の支払いが大きな負担になってしまいます。


そこで、退職・失業した人に対して「本来支払うべき年金の全額または一部を免除しますよ!」という制度が用意されています。


これは「退職(失業)特例免除」といい、通常、年金の免除を受ける場合は前年の所得で審査されることになっていますが、退職や失業が理由の場合は、前年に所得があっても免除の申請をすることができるようになっています。

令和6年度の国民年金保険料月額16,980円です。退職・失業しても余裕がある人は別ですが、次の仕事が見つかるまでの間はできるだけ出費を抑えたいという人には大変ありがたい制度です。


Point!
国民健康保険の軽減制度と違い「失業した理由」は関係ないので、雇用保険に未加入でも申請をすることができます。



それでは、退職・失業・事業を辞めた人が受けることのできる年金免除について、詳しく見ていきましょう。

年金はどれくらい免除される?

国民年金の免除は前年の所得によって、全額免除4分の3免除半額免除4分の1免除の4つの段階に分けられます。(※退職特例免除の場合は、前年の所得は0円として審査されます。)


令和6年度の国民年金保険料は16,980円なので、免除が認められると負担額はそれぞれ以下となります。

全額免除 0円
4分の3免除 4,250円
半額免除 8,490円
4分の1免除 12,740円

(令和6年4月~令和7年3月まで)


スポンサーリンク

将来の年金への影響は?

負担する額が減るのはわかったけど、「将来の年金への影響が心配・・・」という人もいると思います。そこで、免除が認められた場合、将来の年金の影響はどうなるのか?を確認していきましょう。

「全額免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
全額免除を受けている期間でも、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。

<将来もらえる年金額への影響>
全額免除の場合、「<2分の1>の保険料納付済み」としてカウントされることになっていますので、全額免除の期間についての年金は将来半分受け取れることになります。

国民年金保険料の負担は0円で将来、半額の年金がもらえることなります。


「4分の3免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「4分の3免除」の期間は、残りの4分の1を払うことで老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(但し、この4分の1については、2年以内に支払わないと未納期間となりますので注意してください。)

<将来もらえる年金額への影響>
4分の1を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の5」を受け取ることができます。


「半額免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「半額免除」の期間は、残りの半額を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(2年以内に支払わないと未納期間となります。)

<将来もらえる年金額への影響>
半額を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の6」を受け取ることができます。


「4分の1免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「4分の1免除」の期間は、残りの4分の3を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(2年以内に納付しないと未納期間となります。)

<将来もらえる年金額への影響>
4分の3を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の7」を受け取ることができます。


ここまでをまとめてみると、免除を受けてもきちんと納付を続ければ、年金の受給資格期間としてカウントされるだけでなく、将来もらえる年金額も有利に計算されるため、メリットは大きいですね。


もちろん、次の仕事が見つかり生活に余裕ができてから、免除期間中の年金をさかのぼって納付することも可能です!


これを「追納」といい、免除を受けた各月から10年以内であれば、さかのぼって納付することができます。(但し、年金を受給する65歳前まで)


追納した分は、老齢基礎年金の年金計算の際に合算されますので、将来満額の年金を受け取りたいと考えている人は、追納を利用してください。


追納は1ヶ月・3ヶ月・半年・1年単位で納付することが可能です。

Check!
免除された年金保険料を3年度目以降に追納する場合、当時の保険料の額に一定の率をかけた加算額が上乗せされることになっています。

いつからいつまで免除されるの?

免除を申請できる期間は退職した日(離職日の翌日)の前月から退職した年の翌々年6月までとなります。


また、過去に対しても2年1ヶ月前までさかのぼって申請することができます。


例えば、令和6年3月31日に退職した人の場合、下の表に当てはめると申請できる期間は翌々年の「令和7年6月まで」となり、令和7年6月までなら過去2年1ヶ月前までさかのぼって申請することができます。


(※申請が遅れると、時効を迎え申請できる期間が少なくなりますので、注意してください。)


<申請期間と退職・失業した年>

申請期間 令和5年6月まで 令和6年6月まで 令和7年6月まで 令和8年6月まで
退職・失業した年 令和3年(1~12月) 令和4年(1~12月) 令和5年(1~12月) 令和6年(1~12月)

(※12月31日に離職したときは翌年の1月が退職・失業した年となります。)

スポンサーリンク

年金免除を受けることができる人の条件

それでは、ここからは年金の免除を受けることができる人の条件を確認していきましょう。


「退職(失業)特例免除」は、会社を退職した人失業した人事業を辞めた人が対象です。

Point!
退職(失業)特例免除の場合、たくさん稼いでいた人でも前年の所得は「0円」で審査されるため、失業したことを証明できれば免除を受けることができます。

所得条件

先ほど、特例免除を受ける場合は前年の所得は関係ないと解説をしましたが、特例免除では、退職(失業)した本人以外(世帯主配偶者)の所得が審査に影響してきます。


そのため、独身1人暮らしの場合は全額免除となりますが、親と同居している人や結婚している人は、その人たちの所得が基準を超えている場合、年金免除対象外となります。


例えば、夫婦2人世帯で夫が失業した場合、妻の所得のみで免除の審査を行います。免除が受けられるかは妻の所得が以下の所得(目安)を超えない必要があります。


全額免除:67万円(122万円)
4分3免除:88万円(143万円)
半額免除:128万円(194万円)
4分1免除:168万円(251万円)

()内は、収入額です。

Check!
妻に収入がない場合は?
例えば、夫婦2人世帯で妻が専業主婦の場合、妻の年金免除の申請もする必要があります。この場合、妻の申請書には「夫の離職したことを証明する書類」を添付して申請するようにしてください。
専業主婦で収入がない場合でも所得の申告は必要です。こちらの記事では申告方法を確認することができますので、良かったら参考にしてみてください。
住民税:無職で収入がない人の申告方法と申告書の書き方を記入例で確認

申請方法を確認

申請する場所

年金の免除申請は、「住民票のある市区町村の窓口」で行い、その後「日本年金機構」で審査が行われます。審査結果は年金事務所から郵送で通知されます。


※直接、年金事務所へ郵送申請も可能です。


最寄りの年金事務所はこちらから検索することができます。⇒日本年金機構ホームページ「全国の相談・手続き窓口」

審査結果が出るまでの期間

審査結果が出るまで2~3ヶ月程度の時間がかかります。


審査結果通知がなかなか届かないという方は、最寄りの年金事務所に問い合わせて現在の進捗を確認するようにしてください。

手続きに必要なもの

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書のコピー
  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • 離職したことを証明する書類※

※離職したことを証明する書類とは、雇用保険に加入していた人は「雇用保険受給者証」または「離職票」となります。雇用保険未加入の人は退職前の会社から「退職証明書」を発行してもらうようにしてください。


その他、事業を辞めた人の場合は法人解散日等の確認ができる「履歴事項全部証明書の写し」、税務署へ提出した「事業廃止届の控え」などで申請することができます。

こちらの記事では「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」の書き方を記入例と併せて確認することができますので、良かったら参考にしてみてください。
<年金免除>退職・失業したときの特例免除申請書の書き方と記入例

「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」は、こちらからダウンロードすることが可能です。⇒日本年金機構ホームページ


年金免除の年度は「7月~翌6月」となっています。退職(失業)特例免除は継続申請ができないので、免除を受けている人が引き続き免除を申請する場合は毎年7月~8月中に申請をする必要があります。

最後に

国民年金を未納のまま放置してしまうと、将来もらえる年金が減るだけではなく、事故や病気で障害や死亡したときに障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないリスクもあるため、年金を払えない場合は一度、市区町村の窓口や年金事務所等で相談するようにしてくださいね。

その他、失業したときは国民健康保険料(税)の負担を軽減する制度もあります。国保の軽減については、こちらの記事で詳しく解説していますので、良かったら参考にしてみてください。
国保の軽減:失業したときの保険料はいくら?計算方法と申請方法を確認
スポンサーリンク