国民健康保険料(税)の軽減制度は、収入の少ない世帯や、会社の倒産や解雇などで失業した人を対象に「保険料の負担を少なくしますよ!」という本当にありがたい制度です。

国民健康保険料は前年の所得に対して計算されるため、失業で収入のない方には大きな負担になりますが、この軽減制度を利用すれば、保険料を大幅に減らすことができます。

そこで今回は「会社の倒産や解雇などで失業した人」の国保軽減について、「軽減を受けるための条件」や「申請方法」また「軽減を受けると保険料(令和5年度)はいくらになるのか?」など、私の住んでいる市区町村の国民健康保険課で確認してみましたので、よろしければ参考にしてみてください。

国保の軽減を受けるための条件

国保軽減 条件
国民健康保険料の軽減制度(会社の倒産や解雇などで失業した方向け)を利用できるのは以下の方となります。


①離職日時点で65歳未満の方


②「雇用保険受給資格者証」の「離職理由」に記載されているコード(数字)が、以下の数字に該当する方

特定受給資格者 11、12、21、22、31、32
特定理由離職者 23、33、34

特定受給資格者とは、会社の倒産、解雇などで離職した方。特定理由離職者とは、雇い止めもしくは正当な自己都合などで離職した方です。


また、「正当な自己都合」とは「会社の移転で通えなくなった方」や「違法な労働環境で働いていた方」などを指し、それ以外の理由「自己都合(離職コード40)」の場合は、国保の軽減制度を利用することができませんので、注意してください。

この「離職日時点の年齢」「離職理由」については、「雇用保険受給資格者証」(以下の画像)の①と②の欄で確認することができます。

雇用保険受給資格者証

Check!
「特例受給資格者証(短期雇用の方)」または 「高年齢受給資格者証(離職日時点で65歳以上の方)」は、軽減の対象にはなりません。

失業手当の「受給期間を延長」するという方で、受給期間の延長中に国保の軽減は受けられるのか?調べている方がいたら、こちらの記事も参考にしてみてください。
受給期間延長中に国保の軽減は受けられる?ハローワークに聞いてみた!
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保険料はどれくらい軽減されるの?

国保の軽減の対象になる方は、前年の給与所得を本来の3割「30/100」として算定した金額で国民健康保険料を算出します。


と言われても、なかなかピンとこないですよね。。。


なので、ここから計算例を見ながら確認していきましょう。

Point!
軽減の対象になるのは前年の給与所得のみで、株・不動産・農業所得などは対象になりません。

実際の保険料はいくらになる?計算方法を確認

今回のモデルは、【東京都世田谷区在住/35歳/独身/給与収入350万円】のケースで計算していきます。

国民健康保険料の計算方法は全国共通ですが、「均等割の額」や「所得割の率」は各市区町村で異なります。また、Aさんは40歳未満のため、介護分保険料は計算に入っていません。

それでは、以下の①~⑥の順に確認していきましょう。

①前年の給与所得を確認

まず始めに、前年の給与所得を確認します。給与所得の確認方法は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」で確認することができます。

令和2年分 源泉徴収票


②所得割額を計算する

所得割額は、このあとの「所得割算定基礎額」を計算するために求めます。


計算方法は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に、国保の軽減「30/100」を掛け算出します。先ほどの源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から計算していくと、


2,370,000円×30%=711,000円


所得割額は711,000円となりました。


③所得割算定基礎額を計算

「所得割算定基礎額」とは、このあと保険料(所得割)を計算するうえで基礎となる金額です。


計算方法は「所得割額-43万円」です。


711,000円-430,000円=281,000円


所得割算定基礎額は、281,000円となりました。


Point!
今回のAさんの場合、失業で受ける「30/100軽減」と、所得に対して受ける「均等割額が5割軽減」が適用されることになります。

ただし、このとき既に「8割軽減」に当てはまる場合は、国民健康保険料の変更はありません。


それでは、続きを見ていきましょう。


ここからは具体的な保険料の計算に入っていきますが、その前に国民健康保険料はどのように構成されているのか、確認しておきましょう。


国民健康保険料は、「医療分」+「支援分」+「介護分※」から構成されています。そのため、このあとは「医療分(均等割+所得割)」「支援分(均等割+所得割)」「介護分(均等割+所得割)※」をそれぞれ計算していきます。(※介護分は40歳~64歳の方が対象になります。)

「国民健康保険料は、どのように決まるのか?」詳しく解説した記事がありますので、よろしければ参考にしてみてください。
国民健康保険料の計算方法、収入のない妻や子供の保険料も確認!
④医療分を計算

医療分の計算方法は「均等割+所得割」です。なので、まずは「均等割」と「所得割」をそれぞれを計算していきます。


(東京都世田谷区の場合、医療分の「均等割は45,000円」「所得割は7.17%」で計算されています。※令和5年度)

<均等割>
均等割は、45,000円ですが、先ほどの5割軽減を適用します。

42,100円×0.5=22,500円


<所得割>
所得割算定基礎額×7.17%=所得割

281,000円×7.17%=20,147円


それぞれを合計して医療分を算出します。

22,500円+20,147円=42,647円


医療分は42,647円となりました。


⑤支援分を計算

支援分の計算方法も「均等割+所得割」です。なので、「均等割」と「所得割」をそれぞれを計算していきます。


(東京都世田谷区の場合、支援分の「均等割は13,200円」「所得割は2.28%」で計算されています。※令和4年度)


<均等割>
均等割は、15,100円ですが、先ほどの5割軽減を適用します。

15,100円×0.5=7,550円


<所得割>
所得割算定基礎額×2.42%=所得割

281,000円×2.42%=6,800円


それぞれを合計して支援分を算出します。

7,550円+6,800円=14,350円


支援分は14,350円となりました。


⑥保険料の計算

国民健康保険料は「医療分」+「支援分」+「介護分※」でしたね。(※介護分は40歳~64歳までの方が対象です。)


今回のAさんは40歳未満なので、先ほど計算した「医療分」+「支援分」を合計して保険料を計算します。

42,647円+14,350円56,997円


Aさんの年間の保険料は、56,997円となりました。


1ヶ月あたりの保険料は約4,750円となります。

※国保の場合、1年間の保険料を10回で納めることになりますので、月々約5,700円ほどになりますね。



ちなみに、今回のAさんが軽減を受けなかった場合の保険料は年間約243,000円です。。。


月々の支払いは約24,300円となりますので、この差は大きいですね。

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軽減を受けられる期間を確認

保険料の軽減が適用される期間は「離職した日の翌日の属する月から、翌年度末まで」となります。


と、言われても、、、こちらもわかりにくと思いますので、例を用意しました。

<離職日が令和5年1月15日の場合>

離職した翌日の属する月は令和5年1月なので、令和5年1月~令和6年3月まで(1年3ヶ月間)が軽減期間となります。


<離職日が令和5年3月31日の場合>

離職した翌日の属する月は令和5年4月なので、令和5年4月~令和7年3月まで(2年間)が軽減期間となります。



このように離職した日によっては、最大で2年間保険料が軽減されることになりますのでメリットは大きいですね。

ただし、軽減期間中に途中で就職した場合、国保に加入中であれば引き続き軽減の対象になりますが、職場の健康保険に加入するなど国保を脱退すると軽減期間は終了となります。

(※再び失業して国保に再加入した場合、軽減対象期間内であれば、再び軽減制度を利用することができます。)


Point!
国保の軽減期間は、雇用保険の失業給付を受ける期間とは異なります。

手続きの方法を確認

国民健康保険料の軽減を受けるにお住まいの市区町村の窓口で申請手続きが必要です。


ただし、手続きにはハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」が必要になりますので、まずは失業後にハローワークで失業手当の給付申請を行ってください。

ハローワークで行う手続きについては、こちらの記事にまとめています。

損しない失業手当のもらい方!退職してから失業手当をもらうまでの手続き



申請後にハローワークから「雇用保険受給資格者証」が発行されますので、この「雇用保険受給資格者証」を持って、お住まいの市区町村窓口で国保の軽減手続きを行います。


この手続きは「雇用保険受給資格者証」が発行されたあとに行いますので、失業後、国保の加入手続きと同時でなくても大丈夫です。


手続きの流れをまとめると、次のようになります。

①失業後、先に国保に加入

②ハローワークで雇用保険受給資格者証の発行

③国保の軽減手続き



先に国保に加入していても保険料の軽減は、失業日の翌日に遡って適用(再計算)されますので、安心してください。

手続きに必要なもの

国保の軽減手続きは窓口または、郵送でも受付けている市区町村がありますので、それぞれケース別に必要書類をまとめました。


<窓口で申請する場合に必要なもの>

  • 国民健康保険税軽減申告書(窓口に用意されています。)
  • 「雇用保険受給資格者証」の原本
  • 国民健康保険証



<郵送で申請する場合に必要なもの>

  • 国民健康保険税軽減申告書(市区町村HPからダウンロードできます。)
  • 「雇用保険受給資格者証」のコピー
  • 国民健康保険証のコピー

※その他、市区町村によっては、マイナンバー(通知カード・個人番号カード)が必要になる場合がありますので、申請の際は事前に確認するようにしてください。


軽減後の保険料は、申請をした月の翌月に送られてくる納入通知書で確認することができます。

最後に

既に国民健康保険に加入されている方でも、条件をクリアしていれば国保の軽減を受けることができます。今回の計算でも確認したように、保険料の負担を大幅に減らすことができますので、ぜひ一度、ご自身のケースを確認してみてください。

「軽減を受けても保険料が払えない!」という場合でも、まずは窓口で納付相談するようにしてくださいね。

国民健康保険料が払えない!滞納処分の前にやるべきこと【実体験版】


失業した方は、国民健康保険料の他に年金の免除も申請することができます。国保軽減よりハードルが低く設定されていますので、是非参考にしみてください。
失業したときは年金免除がお得!申請方法と将来の年金への影響を確認
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