国民年金には、年金を払うことが困難な人のために申請をすることで国民年金保険料が免除される制度があります。

そこで今回は、無職・パート・アルバイトなど「収入が少なく年金を払えない!」という方を対象にした「国民年金保険料の免除制度」について、対象条件、申請期間、申請方法など年金事務所に確認したうえで記事を作成してみました。

また、「どのような場合に免除を受けることができるのか?」「免除を受けると将来もらえる年金にどう影響するのか?」についても確認することができますので、よろしければ参考にしてみてください。

年金の免除制度とは

年金 免除申請
20歳から59歳までの人で勤務先の社会保険(厚生年金)に加入していない方は、国民年金に加入し、月々16,520円(令和5年度)の国民年金保険料を納める必要があります。


ただ、中には「毎月、年金の支払が厳しい!」または、「年金を払えず未納のままにしている!」という方もいると思います。


そこで国は、生活に余裕がなく年金を払うことができないという方を対象に「本来支払うべき年金の全額または一部を免除しますよ!」という制度を用意しています。

どれくらい免除される?

国民年金の免除は前年の所得によって、全額免除4分の3免除半額免除4分の1免除の4つの段階に分けられます。


令和6年度の国民年金保険料は16,980円なので、免除が認められると負担額(保険料)はそれぞれ以下となります。

全額免除 0円
4分の3免除 4,250円
半額免除 8,490円
4分の1免除 12,740円

将来の年金への影響は?

負担する額が減るのはわかったけど、「将来の年金への影響が心配・・・」という人もいると思います。そこで、免除が認められた場合、将来の年金の影響はどうなるのか?を確認していきましょう。

「全額免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
全額免除を受けている期間でも、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。

<将来もらえる年金額への影響>
全額免除の場合、「<2分の1>の保険料納付済み」としてカウントされることになっていますので、全額免除の期間についての年金は将来半分受け取れることになります。

国民年金保険料の負担は0円で将来、半額の年金がもらえることなります。


「4分の3免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「4分の3免除」の期間は、残りの4分の1を払うことで老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(但し、この4分の1については、2年1ヶ月以内に払わないと未納期間となりますので注意してください。)

<将来もらえる年金額への影響>
4分の1を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の5」を受け取ることができます。


「半額免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「半額免除」の期間は、残りの半額を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(2年1ヶ月以内に払わないと未納期間となります。)

<将来もらえる年金額への影響>
半額を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の6」を受け取ることができます。


「4分の1免除」が認められた場合

<受給資格期間への影響>
「4分の1免除」の期間は、残りの4分の3を納付することで、老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。(2年1ヶ月以内に払わないと未納期間となります。)

<将来もらえる年金額への影響>
4分の3を納付することで、全額納付した場合の年金額の「8分の7」を受け取ることができます。


ここまでをまとめてみると、免除を受けてもきちんと納付を続ければ、年金の受給資格期間としてカウントされるだけでなく、将来もらえる年金額も有利に計算されるため、メリットは大きいですね。


もちろん、生活に余裕ができてから、免除期間中の残りの年金をさかのぼって納付することも可能です!


これを「追納」といい、免除を受けた各月から10年以内であれば、さかのぼって納付することができます。(但し、年金を受給する65歳前までです。)


例えば、半額免除を受けた場合、残りの半額を2年1ヶ月以内に払わなければ未納期間となり追納することができませんが、半額を払っておけば、残りの半額は10年以内であれば追納することができるということです。


追納した分は、全額納付済期間としてカウントされますので、将来満額の年金を受け取りたいと考えている人は、追納を利用してください。


追納は1ヶ月・3ヶ月・半年・1年単位で納付することが可能です。

Check!
免除された年金保険料を3年度目以降に追納する場合、当時の保険料の額に一定の率をかけた加算額が上乗せされることになっています。

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いつからいつまで免除されるの?

年金免除の年度は下の図のように、毎年7月~翌年6月までを「1年度」としています。
年金 令和6年

そのため、各年の「7月~翌年6月まで」が免除対象期間となります。令和6年度は「令和6年7月~令和7年6月まで」の期間となりますね。(令和6年度の免除を希望する場合は、令和6年7月1日以降に申請をすることになります。)


また、年度の途中で申請する場合でも、現在では過去2年1ヶ月前までさかのぼって申請することができるようになっています。


例えば、令和6年4月に申請をする場合、「令和4年3月まで」までさかのぼって申請することができます。

令和6年 年金免除 退職

(※申請が遅れると、時効を迎え申請できる期間が少なくなりますので、注意してください。)


下の表では令和6年7月に申請した場合の申請可能期間をまとめています。さかのぼって申請する方は参考にしてみてください。


<申請年度と申請可能期間>

年度 申請可能期間
令和3年度分 令和3年7月から令和4年6月
令和4年度分 令和4年7月から令和5年6月
令和5年度分 令和5年7月から令和6年6月
令和6年度分 令和6年7月から令和7年6月

Check!
年度ごとに申請書が必要
過去にさかのぼって申請する場合は、1年度ごとに申請書を提出する必要があります。

例えば、令和6年8月に令和4年7月から令和7年6⽉までの期間を申請する場合、

①令和4年度分(令和4年7⽉〜令和5年6月)

②令和5年度分(令和5年7⽉〜令和6年6月)

③令和6年度分(令和6年7⽉〜令和7年6月)

合計3枚の申請書を提出する必要があります。

年金免除を受けることができる人の条件

それでは、ここからは年金の免除を受けることができる人の条件を確認していきましょう。

①失業・退職した方、事業を辞めた方など

失業・退職した人、事業を辞めた人などは、「退職(失業)特例」を利用することができますので、こちらの記事を参考にしてみてください。
失業したときは年金免除がお得!申請方法と将来の年金への影響を確認

②前年の所得が少ない方

申請者(本人)、配偶者(結婚相手)、世帯主(両親など)それぞれの前年の所得が基準額以下の場合に、年金の免除を受けることができます。


単身の方が申請する場合は本人のみの所得を確認すれば良いですが、結婚されている方や両親と同居している方の場合は、その方たちの所得も審査の対象となります。


1人でも所得基準を上回ってしまうと、免除対象外となってしまいます。


下の表に免除の対象となる所得の基準額(目安)をまとめています。

世帯人数 全額免除 4分の3免除 半額免除 4分の1免除
単身世帯 67万円以下 88万円以下 128万円以下 168万円以下
2人世帯(夫婦) 102万円以下 126万円以下 166万円以下 206万円以下
4人世帯(夫婦+子2人、子の一人は16歳以上23歳未満) 172万円以下 227万円以下 267万円以下 307万円以下

ここでの所得とは収入ではありませんので、間違えないようにしてください。


「所得」とは「給与所得=収入金額-給与所得控除」「事業所得=収入金額-必要経費」です。給与収入のみの場合は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に記載されている金額です。


前年の所得とは?

前年の所得は、申請する年度の前の年の所得となります。わかりやすいように表にしましたので、確認してみましょう。

令和4年度分を申請する場合 令和3年1月~12月の所得
令和5年度分を申請する場合 令和4年1月~12月の所得
令和6年度分を申請する場合 令和5年1月~12月の所得

年金免除制度は所得審査となりますので、収入がない方でも「住民税の申告」または「確定申告」が必要です。

こちらの記事では、収入がない方の「住民税の申告」方法を紹介していますので、良かったら参考にしてみてください。
住民税:無職で収入がない人の申告方法と申告書の書き方を記入例で確認

※その他、年金免除の対象になる方は、障害のある方、寡婦(母子家庭の方)、生活保護を受けている方、特別障害給付金を受けている方も免除の対象になりますが、今回は「前年の所得が少ない方」を対象にまとめています。

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申請方法を確認

では次に、「どこで申請するのか?」「結果が出るまでの期間」「申請手続きに必要なもの」を確認していきましょう。

申請する場所

年金の免除申請は、「住民票のある市区町村の窓口」で行い、その後「日本年金機構」で審査が行われます。審査結果は年金事務所から郵送で通知されます。(※郵送申請も可能です。)

審査結果が出るまでの期間

審査結果が出るまで2~3ヶ月程度の時間がかかります。


申請時に職員の方からもアドバイスがあると思いますが、審査期間中に年金未納の督促状が届いても支払いは保留でokです。間違って支払ってしまった場合は、(免除申請日以降であれば)後から返金してもらうことができます。


また、国民年金保険料を毎月口座引き落としにしている方は、年金事務所へ口座振替停止の連絡をするようにしてください。

手続きに必要なもの

<窓口で申請する場合>

  • 年金手帳または年金番号通知書
  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
こちらの記事では「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」の書き方について解説しています。
国民年金免除・猶予申請書の書き方!申請期間と年度の確認方法を解説



<郵送で申請する場合>

  • 年金手帳の氏名記載欄のコピーまたは年金番号通知書のコピー
  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書

「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」は、こちらからダウンロードすることが可能です。⇒日本年金機構ホームページ:国民年金保険料免除・納付猶予申請書PDFファイル


年金免除の申請時期は毎年7月~となっていますが、国民年金保険料免除・納付猶予申請書の継続希望区分で「1.する」に〇を付けた方で、全額免除が認められた場合は、翌年度以降は所得の申告をしておけば自動的に審査が行われますので、免除申請は不要です。


ただし、過去の年度分の申請のみを行った場合は継続審査にはなりませんので、注意してください。

最後に

年金の免除制度は加入期間としてカウントされるだけでなく、年金の一部を払ったことにしてくれる本当にありがたい制度です。


未納のまま放置してしまうと、将来もらえる年金が減るだけではなく、事故や病気で障害や死亡したときに障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないリスクもあるため、時効を迎える前に市区町村の窓口や年金事務所等で相談するようにしてください。

こちらの記事では、国民健康保険料の軽減についてまとめています。収入が少なく国保の支払いも難しいという方は、参考にしてみてください。
国保軽減:収入が少ない家庭の保険料は何割安くなる?減額の調べ方を解説

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