年末調整のときに会社へ提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」は、あなたに「源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族がいるか」また「障害者や寡婦・ひとり親、勤労学生に該当するか」などを確認する書類で、あなたの来年(令和6年)の給与を計算するときに利用します。
会社は、社員の家族構成など把握していないと給与計算ができないため、正確に記入する必要があります。
そこで、今回は<令和6年分>給与所得者の扶養控除等申告書の書き方を解説します。
<令和6年分>給与所得者の扶養控除等申告書の書き方
令和6年分の扶養控除申告書の記入方法を、下記の①~⑥の順に解説していきます。
①所轄税務署長等、給与の支払者、あなたの情報
こちらは、主に会社側で記入するため、記入不要です。
「あなたの氏名(フリガナ)」「生年月日」
記入例を参考に本人の氏名(フリガナ)を記入します。※令和3年から押印は不要になりました。
「あなたの個人番号」
会社によっては、記入せず提出する場合がありますので、勤務先の指示に従うようにしてください。
「世帯主の氏名」
世帯主の氏名を記入します。
ご実家に住んでいる方の場合は、父や母の氏名になると思いますので、気をつけてくださいね。
「あなたとの続柄」
世帯主に記入した方とあなたの関係です。
世帯主があなたの場合は「本人」で、世帯主が父(母)の場合は「父(母)」と記入してください。
「あなたの住所又は居所」
住民票の住所?実際に住んでいる住所?
私の勤務先でも「住民票の住所と違うところに住んでいるんだけど、どちらの住所を記入すればいいか?」という質問を受けることがありますが、この住所とは住民票の住所ではなく、実際に住んでいる住所を記入することになっています。
いつの時点の住所?
この住所は「その年の1月1日現在の住所」を記入することになっていますので、今年(令和5年)の年末調整に提出する「令和6年分・扶養控除申告書」には、令和6年1月1日の住所を記入してください。
年末調整の書類は11月下旬ごろ会社に提出するため、12月中に引っ越しをする場合「引っ越し先の住所を記入するべきか」、「引っ越し前(現在)の住所を記入するべきか」迷う方もいると思います。
既に引っ越し先の住所が決まっている場合は、「引っ越し先の住所」を記入し、新住所が決まっていない場合は、ひとまず「引っ越し前(現在)の住所」を記入してください。(※引っ越し後、新しい住所を会社に報告するようにしてください。)
「配偶者の有無」
結婚して妻や夫(配偶者)がいる方は「有」に、結婚していない方は「無」に〇をつけてください。
「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」
「給与所得者の扶養控除等申告書」は、1か所でしか提出することができませんが、2か所以上で働いている方で「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している方は、〇をつけてください。
(2か所以上で働いている方の場合は、一般的に確定申告をするので、該当する人は少ないと思いますが。。。)
例えば、A社とB社でダブルワーク(A社では正社員として働き、B社ではアルバイトとして働いている)をしていて、A社で扶養控除枠が使いきれない場合は、B社に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出して扶養控除などを受けることができます。
(例:5人のお子さんがいて、3人のお子さんはA社で扶養控除を受け、残り2人のお子さんはB社で扶養控除を受ける場合など。)
② A 源泉控除対象配偶者
「源泉控除対象配偶者」欄には、あなた(本人)の令和6年1月1日~12月31日までの所得(予想)が900万円以下で、あなたと生計を一にする配偶者(妻または夫)の令和6年1月1日~12月31日までの所得(予想)が95万円以下である場合に、その「配偶者」の情報を記入します。
「源泉控除対象配偶者」の条件や所得の見積額(予想)の確認方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶令和6年分・扶養控除等申告書の「源泉控除対象配偶者」の条件と書き方
該当しない場合は、空欄でokです。
③ B 控除対象扶養親族(16歳以上)
「控除対象扶養親族」欄には、あなたと生計を一にする16歳以上※の親族で、令和6年中の所得の見積額が48万円以下(給与収入のみの場合は年収103万円以下)の人がいる場合に、その人の情報を記入します。
(※令和6年分の扶養控除申告書に記入する16歳以上とは、平成21年1月1日以前に生まれた人が対象です。)
ただし、この「控除対象扶養親族(16歳以上)」は、年齢ごとに「一般の扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族」の3つに分かれていて、記入方法も異なるため、こちらの記事で詳しく解説します。
▶<年末調整>令和6年分・扶養控除等申告書「控除対象扶養親族」の書き方
該当する方がいない場合は、空欄でokです。
④ C 障害者、寡婦・ひとり親、勤労学生
障害者控除を受ける場合に、記入する欄です。
障害者控除には、いくつかの記入パターンがありますので、ケース別に解説していきます。
<あなた本人が障害者の場合>
まず「障害者」に✔を入れ、「本人」欄の「一般の障害者」または「特別障害者」の欄に✔を入れます。
続いて、「障害者の内容」欄には、「障害者手帳の種類」「障害者手帳の交付日」「障害の等級」を記入して完了です。
<同一生計配偶者が障害者の場合>
同一生計配偶者(妻また夫)が、障害者控除を受ける場合に記入する欄です。
「同一生計配偶者」とは、次のすべてに該当する人です。
「障害者」に✔を入れ、「同一生計配偶者」欄の「一般の障害者」の欄に✔を入れます。
続いて、「障害者の内容」欄に、「配偶者の氏名」「障害者手帳の種類」「障害者手帳の交付日」「障害の等級」を記入すれば完了です。
「障害者」に✔を入れ、「同一生計配偶者」欄の「特別障害者(同居してない場合)」の欄に✔を入れます。
続いて、「障害者の内容」欄に、「別居している配偶者の氏名」「障害者手帳の種類」「障害者手帳の交付日」「障害の等級」を記入すれば完了です。
「障害者」に✔を入れ、「同一生計配偶者」欄の「同居特別障害者」の欄に✔を入れます。
続いて、「障害者の内容」欄に、「同居している配偶者の氏名」「障害者手帳の種類」「障害者手帳の交付日」「障害の等級」を記入すれば完了です。
扶養親族(両親、祖父母、子、孫など)が、障害者控除を受ける場合に記入する欄です。(※16歳未満の扶養親族も適用されます。)
「障害者」に✔を入れ、「扶養親族」欄の「一般の障害者」「特別障害者(同居してない場合)」「同居特別障害者」のいずれか該当する欄に✔を入れます。
また、このとき( )の中に控除を受ける扶養親族の人数も忘れずに記入してください。
続いて、「障害者の内容」欄に、「控除を受ける扶養親族の氏名」「障害者手帳の種類」「障害者手帳の交付日」「障害の等級」を記入すれば完了です。
寡婦・ひとり親
こちらは、「寡婦・ひとり親」控除を受ける場合に記入する欄です。
以前は、ひとり親でも離婚や死別であれば寡婦(寡夫)控除が適用されたのに対し、「未婚」(婚姻歴のない方)の場合は、寡婦控除が適用されなかったり、男性と女性で控除の額が違うなど、男女の中でも扱いが異なっていました。
しかし、令和2年4月から「すべてのひとり親へ対し、公平な税制支援を行う」という観点から、現在では「ひとり親控除」が新設されています。
以前は「寡婦」「寡夫」「特別の寡婦」の3通りでしたが、現在は「寡婦」か「ひとり親」のいずれかとなります。
「寡婦・ひとり親」の要件や扶養控除等申告書の書き方については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
▶寡婦・ひとり親の要件と<令和6年分>扶養控除等申告書の書き方を解説
勤労学生
こちらは、働きながら学校等に通っている学生さんが税金の軽減制度「勤労学生控除」を受けるときに記入する欄です。
勤労学生控除は、一定の条件を満たせば所得金額から基礎控除48万円(※)の他に27万円を差し引くことができる制度です。
(※これまで基礎控除は一律38万円でしたが、令和2年から所得金額2,400万円以下の場合、基礎控除は48万円となります。)
「勤労学生」の要件や扶養控除等申告書の書き方については、こちらの記事で詳しく解説していますので、調べている方がいたら参考にしてみてください。
▶<勤労学生の申告方法>令和6年分・扶養控除等申告書の書き方と記入例
⑤ D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
こちらは、1人の扶養親族につき二重で控除を受けることを防ぐために記入する欄です。
例えば、共働きで16歳以上のお子さん(扶養親族)がいて、「子ども(扶養親族)は、夫の扶養親族にしています!(妻の扶養親族にはしません。)」という場合に、妻がそのお子さんの情報を記入します。(一人のお子さんを夫婦両方で控除することができないため。)
その他、16歳以上のお子さん(兄弟)で、兄は夫の扶養親族、弟は妻の扶養親族というように扶養親族をわけるときにも記入します。
⑥ 住民税に関する事項
16歳未満の扶養親族
こちらは、16歳未満(平成21年1月2日以後に生まれた)のお子さん(扶養親族)がいる場合に記入する欄です。
16歳未満(0~15歳)の親族は、あなたの所得税額に影響はありませんが、住民税の非課税限度額の計算には、16歳未満の親族も考慮されるため、こちらに記入することになっています。
- 個人番号
- あなたとの続柄
会社によっては記入せず提出する場合がありますので、勤務先の指示に従うようにしてください。
「子」または、「長男、次男、長女、次女」など。
留学しているお子さん等で、国内に住所がない場合は〇をつけてください。
16歳未満のお子さんで所得があるケースは少ないと思いますが、所得がある場合は令和6年中の所得見込み額を記入してください。
こちらは、令和6年中に変更があった場合に記入する箇所なので、今年(令和5年)の年末調整のときには記入不要です。
退職手当等を有する配偶者・扶養親族
こちらは、令和5年分から新たに追加された欄で、配偶者や扶養親族が退職金をもらったとき(令和6年中に配偶者や扶養親族が退職して退職金をもらう予定がある場合)に、その配偶者や扶養親族の情報を記入することになります。
配偶者の場合は、合計所得の見積額が133万円以下の場合にこちらに記入することになります。例えば、妻(源泉控除対象配偶者とします)が令和6年中の所得の見積額65万円(給与収入120万円-給与所得控除55万円)、退職金80万円(見積り額)の場合の記入例です。
このように「令和5年中の所得の見積額」には、退職所得は含めず記入してください。
なぜ新たな記入欄ができたのか?
所得税と住民税の間で同一生計配偶者や扶養親族となる要件には「合計所得金額48万円以下」というのがありますが、「所得税は、合計所得金額に退職所得を含む」に対して、「住民税は、合計所得金額に退職所得を含まない」となっています。
これにより、退職金を受け取った配偶者や扶養親族がいる場合、所得税は扶養対象外だけど、住民税は対象となる場合がある、ということから令和5年分の扶養控除等申告書からその点を配慮して住民税に関する事項で新たな記入欄が追加されました。
以上で、令和6年分・扶養控除等申告書の記入は完了です。
最後に
「令和6年分・給与所得者の扶養控除等申告書」は、来年(令和6年)の1月分の給与から引かれる源泉徴収を計算するために必要な書類で、令和6年の最初の給与をもらう日の前日までに提出することになっています。(実際には会社が給与計算する日までとなります。)
一般的には、年末(年末調整のとき)に提出することになりますが、正確な情報を記入しないと税金を多く引かれてしまうことがありますので、注意してください。