新型コロナウイルスの影響で収入が減少した人向けに様々な制度が創設されていますが、「仕事が激減して国民年金保険料が払えない」という場合には、国民年金保険料が免除される「臨時特例」が用意されています。
そこで今回は、国民年金保険料免除の「臨時特例(令和3年度版)」について、免除の条件や免除額の確認方法についてまとめてみました。
こちらの記事は、会社でお仕事を依頼しているフリーランスの方から「仕事が激減して国民年金保険料が払えない」という相談を受け、私の住む市区町村に確認した内容をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
(※臨時特例には、「一般用」と「学生用」がありますが、こちらの記事は「一般用」で解説しています。)
国民年金の免除「臨時特例」の対象になる人
今回の「臨時特例」で、国民年金保険料が免除される人は、次の①と②に該当する人です。
①新型コロナウイルスの影響で令和2年2月以降の収入が減少している
②令和2年2月以降のいずれかの月の所得を12倍した額が、現行の国民年金保険料の免除等に該当する場合
本来、国民年金保険料の免除を受ける場合は、昨年1年間の所得を基準に判定しますが、今回の臨時特例では、令和2年2月以降で最も収入が減少している月の所得(収入ではありません)を12倍して「年間の所得見込み額」を出し、この「年間の所得見込み額」が、国民年金保険料の免除基準まで減少している場合に対象になります。
「年間の所得見込み額」って?という方も多いと思いますので、まずは「年間の所得見込み額」の確認方法から解説します。
「年間の所得見込み額」の確認方法
「年間の所得見込み額」は、次の順に計算して求めます。
では、①~④について解説していきます。
①「収入」を確認する
まず、令和2年2月以降で最も収入が減少している月の収入額を確認してください。
②「収入見込み額」を計算する
収入見込み額は、次の計算式で求めることができます。
収入見込み額=「①の収入」×12ヶ月
③「控除額」を計算する
控除額は、「事業収入、不動産収入がある方」「給与収入がある方」「公的年金収入がある方」で確認方法が異なります。
④「年間の所得見込み額」を計算
最後に「年間の所得見込み額」を計算します。
「年間の所得見込み額」=「②収入見込み額」-「③控除額(事業収入・不動産収入の控除額+給与所得控除+公的年金等控除)」
あとは、この「年間の所得見込み額」を下の表に当てはめて免除の割合を確認します。
免除の割合を確認する
※年金免除の判定には、世帯主と配偶者の所得も審査の対象となります。(猶予の場合は、配偶者のみ)
<令和3年度の所得基準>
世帯人数 | 全額免除 | 4分の3免除 | 半額免除 | 4分の1免除 |
---|---|---|---|---|
単身世帯 | 67万円以下 | 88万円以下 | 128万円以下 | 168万円以下 |
2人世帯(夫婦) | 102万円以下 | 126万円以下 | 166万円以下 | 206万円以下 |
4人世帯(夫婦+子2人、子の1人は16歳以上23歳未満) | 172万円以下 | 227万円以下 | 267万円以下 | 307万円以下 |
※この金額は収入金額ではなく「所得金額」となりますので、間違えないようにしてください。
では具体例で確認してみましょう。
ここでは、独身で一人暮らしをしているフリーランスの方(Aさん)を例に解説します。
まず、「収入の見込み額」を計算します。
10万円×12ヶ月=120万円
続いて、「控除額」を確認します。
Aさんは事業収入のみなので(必要経費)180万円です。
最後に「年間の所得見込み額」を計算します。
120万円-180万円=-80万円
この場合、「年間の所得見込み額」は「0円」となります。
あとは、この「年間の所得見込み額」を下の表に当てはめ免除の割合を確認します。
Aさんは、独身一人暮らしなので「単身世帯」→年間の所得見込み額は0円なので「67万円以下」→「全額免除」となります。
国民年金の免除は「年間の所得見込み額」によって、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4つの段階に分けられます。
令和3年度の国民年金保険料は16,610円なので、免除が認められると負担額(保険料)はそれぞれ次のようになります。
全額免除 | 0円 |
---|---|
4分の3免除 | 4,150円 |
半額免除 | 8,310円 |
4分の1免除 | 12,460円 |
「2020年2月~6月までの間(令和元年度分)」と「2020年7月~2021年6月(令和2年度分)」で国民年金保険料が未納になっている場合は、さかのぼって免除を受けることができますが、すでに支払っている分については、免除を受けることができませんので、注意してください。
免除を受けると、「将来の年金への影響が心配・・・」という人もいると思いますが、免除を受けても受給資格期間(10年)はカウントされます。
ただし、将来もらえる年金額については、保険料を全額納付した場合と比べて少なくなります。(10年以内であれば、あとで納付することができます。)
どれくらい少なくなるのか?については、こちらの記事にまとめていますので、よろしければ参考にしてみてください。
国民年金保険料免除「臨時特例」の申請方法
申請先は、お住まいの市区町村の国民年金担当課または最寄りの年金事務所です。
(※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、郵送手続きをおススメします。)
必要書類
臨時特例による免除の申請に必要な書類は、次の2点です。
(※学生の場合は、「国民年金保険料学生納付特例申請書」「所得の申立書」「学生証のコピー」が必要です。)
「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」「所得の申立書」は、日本年金機構HPからダウンロードが可能です。
最後に
年金免除の「臨時特例」は、令和3年度分(令和3年7月~令和4年6月)も延長されることになりました。
年金免除の年度は「毎年7月~翌年6月まで」となっていますので、以前免除を受けた方でも引き続き免除を受ける場合は、改めて申請が必要になりますので注意してください。