令和2年度は、新型コロナウイルスの影響で、国民健康保険料(税)の支払いが困難という方に、国民健康保険料(税)の減免制度が創設されましたが、令和3年度(令和3年4月~令和4年3月分)も引き続き減免制度が利用できるようになりました!
そこで今回は、国民健康保険料が減免になる方(世帯)の条件や減免期間、申請方法について、私の住んでいる市区町村で確認した内容をまとめてみました。
この減免制度を利用すると、国民健康保険料(税)が減額または免除となりますので、ぜひ参考にしてみてください。
※こちらは令和3年度までの制度です。令和5年度は受付ておりません。
国民健康保険料の減免対象者(対象世帯)
今回の減免制度は、市区町村で加入されている国民健康保険が対象です。国保組合に加入されている方(建設・医師など)は、別の制度となりますので、注意してください。
また、国民健康保険は、市区町村によって保険料と保険税に分かれていますが、制度の内容は同じなので、以下「国民健康保険料」とさせていただきます。
新型コロナウイルスの影響により国民健康保険料の減免を受けることができるのは、次のAまたはBに該当する方(世帯)です。
A.新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った世帯
B.新型コロナウイルスの影響により、収入が減少した世帯
では、「A」に該当する方の条件から順番に解説していきます。
A.新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った世帯
<主たる生計維持者とは?>
国民健康保険は世帯単位で加入しているため、原則として住民票上(国保上)の世帯主です。
ただし、「世帯主に所得がほとんどなく、他の世帯員に収入がある場合は、実態に応じて申請者を決めることができる」とあります。
この件について、先日、私の住む市区町村に確認したところ、例えば、父・母・子(20歳以上・同居)の3人家族の場合で、住民票上の世帯主は「父」になっていますが、父に所得はほとんどなく、実態として生計を支えているのが収入が最も多い「子」であった場合は、主たる生計維持者を「子」にすることができるということでしたので、参考にしてみてください。
<重篤な傷病とは?>
新型コロナウイルス感染症の症状が重く、治療や入院に1ヶ月以上かかる場合など。(※1ヶ月未満でも「重篤な傷病」と判定される場合がありますので、お住まいの市区町村で確認することをおススメします。)申請時には、医師の診断書が必要です。
また、世帯主が新型コロナウイルス感染症により死亡した場合も、新型コロナウイルス感染症による死亡を証明する診断書を提出する必要があります。
「新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った世帯」に該当する場合は、収入や所得にかかわらず、国民健康保険料は「全額免除」となります。
その他、世帯主(主たる生計維持者)が事業の廃止や失業をした場合も、前年の合計所得金額は関係なく「全部免除」となります。
勤務先の倒産や解雇によって収入が減少した方(会社都合で離職した方)には、別の制度が用意されていますので、こちらの記事を参考にしてみてください。
続いて「B」に該当する方の条件を解説していきます。
B.新型コロナウイルスの影響により、収入が減少した方
新型コロナウイルスの影響により、収入が減少した方(世帯)の国民健康保険料の減免については、下記のフロー①→②→③すべての条件をクリアした方が対象となりますので、条件①~③について解説していきます。
条件①
主たる生計維持者の令和3年の収入が、前年(令和2年)に比べ30%以上減少することが見込まれる
ただし、世帯主は、必ずしも「収入が一番多い人」でなければいけないというわけではありません。住民票上の同一世帯の方であれば、国保上の世帯主でなくても、申請者の申出で「主たる生計維持者」にすることができます。
(主たる生計維持者が国民健康保険に加入していない(会社の健康保険・後期高齢者医療制度等に加入しているなど)場合でも、収入減少の条件を満たせば申請することが可能です。)
また、「世帯主に所得がほとんどなく、他の世帯員に収入がある場合は、実態に応じて申請者を決めることができる」とありますが、この件については、例えば、父・母・子(20歳以上・同居)の3人家族の場合で、住民票上の世帯主は「父」になっていますが、「父」に所得はほとんどなく、実態として生計を支えているのが収入が最も多い「子」であった場合は、主たる生計維持者を「子」にすることができるということでしたので、参考にしてみてください。
(私の住む市区町村の場合は、申請時に「主たる生計維持者は子(申請者)である」ということを記入するだけでokということでした。)
収入が複数ある場合は、合算ではなくいずれか一つの収入が30%以上減少する可能性があればOKです。
例えば、個人事業主の方で事業収入と不動産収入(家賃収入)がある場合、不動産収入(家賃収入)は減少する見込みがなくても、事業収入が30%以上減少する見込みであれば対象です。
例えば、2020年6月まで会社員で「給与収入」があり、2020年8月から個人事業主として「事業収入」を得ていた場合、30%以上減を比較するときの収入は「2020年の事業収入」と「2021年の事業収入」となります。
ただし、市区町村によって対応が異なる可能性もありますので、念のためお住まいの市区町村ホームページ等を確認するようにしてください。
「30%以上減少」って、どうやって調べるの?
まず、「前年(令和2年1月~令和2年12月までの1年間)の収入」を確定申告書や源泉徴収票で確認してください。(下記参考)
確定申告書Bで申告した方 | 第一表の収入金額等欄「ア.営業等収入」「イ.農業収入」「ウ.不動産収入」「カ.給与収入」、第三表の「ナ.山林収入」の金額 |
---|---|
確定申告書Aで申告した方 | 第一表の収入金額等欄「ア.給与収入」の金額 |
源泉徴収票 | 「支払金額」の金額 |
続いて、「令和3年中の収入見込み額」を確認します。
これは、令和3年1月から直近の月までの収入に、その翌月から12月までの収入見込み額をプラスして算出してください。
「令和3年中の収入見込み額」=(令和3年1月~直近までの実際の収入額)+(その翌月~12月までの収入見込み額)
「12月までの収入見込み額」については、正確性は問わないということなので、2021年1月以降で最も収入が減少した月の12倍や、前年同期を参考に見込み額を算出してみてください。
見込み額の判定基準は、各市区町村によって異なる場合がありますが、私の住む市区町村では「現時点で分かる範囲(予想)で大丈夫です。大幅な乖離はマズいですが、悪質でなければ少なめに見積もっても大丈夫です。」ということでした。
※減免の決定後、収入状況が改善した場合は、その時点で申告するようにしてください。
あとは、次の計算式に当てはめれば「減少率(%)」がわかります。
減少率(%)=「前年(令和2年)の収入」-「令和3年中の収入見込み額」÷「前年(令和2年)の収入」×100
条件①をまとめると、世帯主の令和2年中のいずれかの収入(事業収入・給与収入・不動産収入・山林収入)が、前年(令和2年)に比べ30%以上減少することが見込まれる場合は対象となります。
続いて、条件②を確認していきましょう。
条件②
令和2年の合計所得金額が1,000万円以下である
合計所得とは?
総所得(事業所得・不動産所得・給与所得・年金所得・雑所得等)、山林所得、申告分離課税所得(株式の譲渡所得等含む)のすべての所得を合計した金額です。(ぞれぞれ収入から経費を引いた金額の合計です。)
ただし、退職所得は含みません。また、各種控除(社会保険料、生命保険料、医療費、寄附金、配偶者、扶養、基礎など)については、控除する前の金額です。
合計所得金額が1,000万円を超える方は、そう多くないと思いますので、ほとんどの方はクリアできていると思います。
最後の条件③は、収入(事業収入、不動産収入、給与収入、山林収入)が2つ以上ある方の条件となりますので、そもそも収入が1種類しかないという方は、パスしてください。
条件③
条件①以外の収入について、前年中の所得の合計が400万円以下である
例えば、事業収入と不動産収入がある方で、事業収入が①(30%以上減少)に該当する場合は、令和2年(令和2年1月~令和2年12月までの1年間)の不動産所得が400万円以下であれば対象です。
その他、給与収入・配当収入・雑収入がある方で、給与収入が①(30%以上減少)に該当する場合は、配当所得・雑所得の合計額が400万円以下であれば対象です。
逆に対象外になる例をあげると、事業収入と給与収入がある方で、事業収入は30%以上減少する見込みでも、令和2年(令和2年1月~令和2年12月までの1年間)の給与所得が400万円以上になる場合は、経済的に余裕があるという判断をされるため、対象外となります。
以上の条件①②③をすべてクリアしている方は、国民健康保険料の減免の対象となります。
続いて、減免の割合を確認してみましょう。
減免割合
減免の割合は、前年(令和2年)の合計所得金額によって、次のようになります。
前年の合計所得金額 | 減免割合 |
---|---|
300万円以下 | 全部免除 |
400万円以下 | 8割 |
550万円以下 | 6割 |
750万円以下 | 4割 |
1,000万円以下 | 2割 |
廃業・失業の場合は前年の所得金額に関係なく | 全部免除 |
「前年の合計所得金額」は、「前年の収入金額」ではありませんので、注意してください。調べ方については、下記の表を参考にしてみてください。
確定申告書Bで申告した方 | 第一表の所得金額欄「1.営業所得」「2.農業所得」「3.不動産所得」「6.給与所得」、第三表の「68.山林所得」の金額 |
---|---|
確定申告書Aで申告した方 | 第一表の所得金額等欄「1.給与所得」の金額 |
源泉徴収票の場合 | 「給与所得控除後の金額」の金額 |
「減免割合」の判定には、今年の収入や所得は関係ないということですね。
申請はできますが、減免される額は0円となりますので、減免を受けることができません。
「10割」免除になる方の具体例
「今年の収入(事業収入のみ)が前年と比べて30%以上減少する見込みがある」
↓
「令和2年の合計所得金額が1,000万円以下」
↓
「去年の合計所得金額は300万円以下」
↓
「減免割合は10割」
↓
国民健康保険料は全部免除となります。(介護保険料がある場合を除く)
また、世帯主(主たる生計維持者)が事業の廃止や失業をした場合は、前年の合計所得金額は関係なく「全部免除」となります。
▶国保の軽減:失業したときの保険料はいくら?計算方法と申請方法を確認
(※ただし、給与収入以外の収入が条件①②③に該当する場合は対象となります。)
減免される期間はいつからいつまで?
令和3年4月1日~令和4年3月31日までの間に納付期限が設定されているものです。
私の住む市区町村では、減免の判定に1か月~2か月ほど時間がかかるということですが、今回の国保の減免は、(上記の期間で)さかのぼって減免を受けることができますし、減免が認定される前に支払った保険料については、減免認定後に還付(返金)されることになっていますので、条件をクリアしている方は、ぜひ申請を検討してみてください。
減免の判定には時間がかかるため、審査中に納付書が届くことがありますが、減免が認められなかったということではありません。
令和3年度分の場合、6月に送られてくる保険料決定通知書には減免の結果は反映されていませんが、申請後、減免が認められた場合は7月以降に保険料の変更通知書が送られてきます。
減免が認定された後に多く払っていた分は還付(返金)されることになっているため、減免決定通知が届くまでは、届いた納付書に記載されている期限どおりに支払いを行ってください。
申請方法
国民健康保険料の減免の申請先は、お住まいの市区町村です。
現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、基本的には「郵送申請」となっていますので、お住まいの市区町村ホームページから申請書をプリントアウトし、必要事項を記入した上で添付書類と合わせて郵送してください。
同一世帯の中に、前年の所得が少額で、確定申告や住民税を申告していない方がいる場合は、減免判定が正しく行えませんので、未申告の方がいる場合は、令和2年1月1日時点の住所地の市区町村で住民税の申告をしてから申請するようにしてください。
必要書類(例)
必要書類については、各市区町村ごとに異なりますので、詳細はお住まいの市区町村ホームページを確認するようにしてください。
(こちらでは、必要書類の例を記載しています。)
主たる生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った場合
主たる生計維持者の収入の減少が見込まれる場合
こちらの書類は一例です。詳細については、お住まいの市区町村ホームページをご確認ください。
申請期限
令和3年度の国民健康保険料の減免申請は、令和4年3月31日です。
※令和2年度の国民健康保険料の減免申請は、(一部の地域を除き)2021年3月で終了しています。
最後に
今回は、新型コロナウイルスの影響により、収入が減少した方の国民健康保険料の減免制度について解説をしましたが、国民年金保険料についても減免制度が用意されていますので、よろしければこちらの記事も参考にしてみてください。
▶<国民年金の臨時特例>免除される人の条件と免除額の確認方法を解説