これまで国の家賃支援給付金というと、2019年以前から事業を行っている中小企業や個人事業主・フリーランスの方が対象でしたが、2020年8月28日からは2020年1月1日~3月31日までに創業・開業した法人(中小企業)や個人事業主・フリーランスの方にも給付対象が拡大されることになりました!
そこで今回は、今年1月~3月創業・開業した方の給付条件と必要書類について解説します。
※家賃支援給付金の申請受付は2021年2月15日で終了しています。
2020年1月~3月に創業・開業された方の給付条件
まず、2020年1月1日~3月31日までに創業・開業した方の給付条件から確認していきましょう。
2020年1月1日~3月31日までに創業・開業された方が給付を受ける場合は、次の①~⑤すべての条件をクリアする必要があります。
①2020年1月1日~3月31日までに創業・開業している中小企業(法人)・個人事業主・フリーランスの方で、事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること
すでに廃業している場合や、廃業する予定がある場合は対象外となりますので、注意してください。
②事業のために土地や建物を賃貸しており、賃料の支払いがあること
家賃支援給付金の対象になる契約や費用については、こちらの記事で確認することができますので、調べている方がいたら参考にしてみてください。
▶最大600万円!家賃支援給付金(法人・個人事業主)の支給額の調べ方
③2020年3月31日の時点と申請日時点で、有効な賃貸借契約があること
2020年3月31日~申請日までの間に、引っ越しや、更新契約をした場合は、2020年3月31日時点の契約書と申請日時点の契約書の2種類が必要となります。
④申請日より直前3ヶ月間の賃料の支払い実績があること
例えば、9月に申請をする場合、「6月・7月・8月」の3ヶ月間の家賃を支払っている必要があります。
⑤2020年開業月~3月までの売上の平均が、次の(1)(2)のいずれかに該当していること
(1)2020年5月~12月のいずれかの月の売上と比較して50%以上減少していること
(例)今年(2020年)1月に創業・開業した場合。
まず、2020年1月~3月の平均売上を計算します。
今回のケースでは、(40万+40万+10万)÷3=30万円ですね。
続いて、この「30万円」を2020年5月~12月の各月の売上と比較して、50%以上減少している月があれば給付の対象になります。
今回のケースでは、5月の売上「10万円」が2020年1月~3月の平均売上と比べて50%以上減少しているため、対象になります。
売上が50%以上減少している月が複数ある場合は?
事業主側で50%以上減少した月を選択することができますので、より減少幅の大きい月を選べば、給付金も多く(上限額まで)もらえることになります。
ただし、家賃支援給付金の場合は2020年5月以降の売上と比較しますので、注意してください。(4月の売上は比較対象外です。)
「50%以上減少している月がない!」という場合は、次の(2)を確認してみてください。
(2)「2020年5月~12月までの間の連続する3ヶ月の売上の合計」が「2020年開業月~3月までの平均売上×3ヶ月」と比較して30%以上減少していること
こちらも具体例を使って解説していきます。
(例)今年(2020年)2月に創業・開業した場合。
まず、2020年2月~3月の平均売上を計算します。
今回のケースでは、(50万+40万)÷2ヶ月=45万円ですね。
続いて、下記の計算式に当てはめて30%減を比較する基準額を計算します。
今回の例の場合は、基準額は(45万円×3ヶ月×0.7=945,000円)94.5万円となります。
あとは、「2020年5月~12月の連続する3ヶ月の売上の合計」と「基準額」を比較して、「2020年5月~12月の連続する3ヶ月の売上の合計」が「基準額」より少なければ、30%以上減少していることになります。
今回のケースでは、5月~7月の連続する3ヶ月の売上の合計(25万円+25万円+30万円)が80万円です。この「80万円」と「基準額94.5万円」を比較すると、「5月~7月の連続する3ヶ月の売上80万円」の方が少ない(30%以上減少している)ので、給付対象となります。
その他、家賃支援給付金の対象になる「契約」や「費用」については、こちらの記事で詳しく解説していますので、まだチェックしていない方がいたら参考にしてみてください。
いくらもらえるの?
国の家賃支援給付金は「地代・家賃の3分の2」が、6ヶ月分一括で支給される制度です。
給付額には上限がありますが、法人で最大600万円、個人事業主(フリーランス含む)で最大300万円となっています。
給付額の調べ方については、こちらの記事で解説していますので、調べている方がいたらチェックしてみてください。
▶最大600万円!家賃支援給付金(法人・個人事業主)の支給額の調べ方
2020年1月~3月に創業・開業した方の必要書類
まず、「中小企業(法人)」と「個人事業主・フリーランスの方」で共通する必要書類からご説明します。
法人・個人で共通の必要書類
中小企業(法人)と個人事業主・フリーランスの方で共通する必要書類は、下記の5点です。
①~⑤の書類について、具体的に解説していきます。
- 家賃支援給付金に係る収入等申立書
- 賃貸契約書の写し
- 直近3ヶ月の家賃の支払い実績を証明する書類
- 通帳等の写し(給付金の振込先口座を確認するため)
- 誓約書
2020年1月~3月に創業・開業された方の場合、確定申告書が提出できないため、こちらの書類に収入金額等を記入し、税理士の確認を受けてから提出します。
ただし、「持続化給付金」の申請の際に「持続化給付金に係る収入等申立書」を提出した方で、税理士の確認を受けた期間と売上(収入)金額が、今回提出する「家賃支援給付金に係る収入等申立書」と同じ場合は、「家賃支援給付金に係る収入等申立書」の税理士の確認は不要です。
例:「持続化給付金に係る収入等申立書」に1月~7月の売上(収入)と税理士の確認が記載されている場合、「家賃支援給付金に係る収入等申立書」に記載する期間と売上(収入)も1月~7月の売上(収入)であれば税理士の確認は不要です。
コールセンターに確認したところ、このときは「持続化給付金に係る収入等申立書(税理士確認済)」と「家賃支援給付金に係る収入等申立書(税理士確認欄は空欄でok)」の2部を添付して申請する必要があるということでした。
今回の例の場合、「家賃支援給付金に係る収入等申立書」に8月の売上(収入)金額を追記して申請する場合は、(同じ期間ではないため)「持続化給付金に係る収入等申立書」は使えませんので、新たに「家賃支援給付金に係る収入等申立書」に税理士の確認を受ける必要があります。
家賃支援給付金に係る収入等申立書の記入方法については、下記の記事を参考にしてみてください。
賃貸契約書では、以下①~④の情報が記載されている箇所に印をつけることになっています。
①賃貸契約であることが確認できる箇所に印をつける
②土地・建物契約であることが確認できる箇所に印をつける
③対象となる土地・建物の住所がわかる箇所に印をつける
④申請する該当費用(賃料、共益費・管理費)に印をつける
その他、⑤~⑧の情報が記載されているかも確認するようにしてください。
⑤2020年3月31日時点と申請日時点の両方で有効な契約であることを確認する
(※更新等で契約書が2部に分かれる場合は両方添付する必要があります。)
⑥押印されていることを確認する。ただし署名があれば押印は不要
⑦賃貸人が現在の賃貸人と同じであることを確認する
⑧賃借人が申請者の名義であることを確認する
<賃貸契約書(見本)>
書類が複数枚ある場合は、全ページを1つのPDFファイルにまとめて添付する必要がありますので、申請前に準備しておいてください。
ただし、「賃貸契約書」については、いつかの例外があります。
上記のようなケースでは、別途証明書などを添付することで認められる場合がありますので、こちら(家賃支援給付金申請要領・中小法人向け別冊)(家賃支援給付金申請要領・個人事業主人向け別冊)を確認してみてください。
※各証明書の様式については、経済産業省HP:家賃支援給付金に関するお知らせからダウンロードすることができます。
「賃貸借契約書に賃料が記載されていない場合は、どうすればいいのか?」申請要領には記載されていなかったので、コールセンターに確認してみてました。
具体的な書類は、次の3点のうちいずれか1点です。
①振込明細書
②領収書
③通帳の「見開き1ページ目と2ページ目」と支払い実績(3ヶ月分)が記帳されている部分の写し
(※申請要領では通帳の表面と記載されていましたが、実際に申請したときは「通帳の見開き1ページ目と2ページ目」の添付に変わっていました。)
コールセンターに確認したところ、振込金額に光熱費や町内会費などが含まれ、実際の賃料と振込金額が異なる場合でも「契約書に記載されている賃料で算定するので問題ありません。」という回答でした。
※書類を添付するときは、直近3ヶ月分を各月ごとに1枚ずつ添付しますので、ファイルは別々に保存しておくとスムーズに申請できると思います。1枚の書類に複数か月分の支払実績が記載されている場合は、同じ書類を再度添付することができます。
金融機関名・金融機関コード・支店名・支店コード・種別(普通・当座)・口座番号・口座名義人(※法人の代表者名義でもok)が確認できるものを添付します。
具体的には、通帳の「表面」と「通帳を開いた1・2ページ目」の両方の写しですが、ネットバンク等で紙媒体の通帳がない場合は、WEB通帳等の画面のキャプチャを添付すればokです。
(※通帳の「表面」と「通帳を開いた1・2ページ目」は、別々に添付しますので、2つのファイルに分けて準備しておくとスムーズに申請できると思います。)
申請時に「誓約書」に住所・名称・代表者名(自署)を記入して添付する必要があります。(主に、不正受給等に関する内容です。)
誓約書は、家賃支援給付金に関するお知らせの様式集から(中小法人等向け・個人事業者等向け)をダウンロードすることができますので、申請前に記入しておいてください。
ここまでは、「中小企業(法人)」と「個人事業主・フリーランス」が、共通して用意する必要がある書類です。
続いて、「中小企業(法人)」と「個人事業主・フリーランス」が別々に用意する書類を確認していきましょう。
中小企業(法人)の必要書類
- 履歴事項全部証明書
設立日(会社成立の年月日)が、2020年1月1日~2020年3月31日までのもの
個人事業主・フリーランスの必要書類
- 開業届または事業開始等申告書
- 本人確認書類
開業日が2020年1月1日~2020年3月31日までのもの(※ただし、提出日(申告日)は2020年4月1日以前になっている必要があります。)
※その他、「開業日、所在地、代表者、業種、書類提出日の記載がある書類」でも申請することが可能です。(例、飲食店の営業許可証など。)
<運転免許証の場合>
表裏(両面)をそれぞれ添付しますので、ファイルは表と裏の2部用意してください。(返納している場合は、運転経歴証明書でも可。)
<個人番号カード、写真付き住民基本台帳カードの場合>
表面のみを添付します。
<在留カード、特別永住者証明書、外国人登録証明書>
表裏(両面)を添付します。
<顔写真付きの本人確認書類がない場合>
次のセットでも申請が可能です。
「住民票の写し」+「パスポート(顔写真掲載ページ)」
「住民票の写し」+「保険証(両面コピー)」
申請時に必要な書類は以上となりますが、添付する書類はスキャン画像以外に、スマホやデジカメで撮影した写真でも(綺麗に映っていれば)OKです。(対応しているファイル形式はPDF・PNG・JPGとなります。)
申請方法
申請受付は、2020年8月28日(金)から開始されています。
申請方法は、「オンライン申請」か「全国に設置されている申請サポート会場」からとなります。
オンライン申請の場合は、家賃支援給付金申請サイトから申請が可能です。
全国に設置されている申請サポート会場で申請する場合は、事前予約が必要になりますので、家賃支援給付金HPの「申請サポート会場」をご確認ください。
2020年8月28日(金)からは、下記に該当する方の申請もスタートします!
- 前事業者の死亡により2020年4月2日以降に事業承継された方
- 2020年1/1~12/31までに創業・開業した方で、2019年中の売上はないが、2020年1月1日~3月31日までの間に売上がある方
新型コロナウイルスの影響で売上が減少した場合に(法人最大200万円、個人事業主最大100万円が)支給される持続化給付金についても、2020年1月1日~3月31日までに創業・開業した中小企業(法人)や個人事業主・フリーランスの方は対象になっています。
まだ申請されていない方がいたら、こちらの記事をチェックしてみてください。
最後に
国の家賃支援給付金は、2020年7月14日(火)よりスタートしていましたが、「2020年1月~3月に創業・新規開業された方」の申請は、約1ヶ月半遅れて2020年8月28日(金)からスタートしています。
私が勤務先の分を申請したときは(不備ナシで)給付まで約3週間でしたが、特例の場合は通常より審査に時間が掛かる可能性がありますので、必要書類等に不備等がないかを確認した上で申請するようにしてください。