先日、会社を退職する人から「退職後は国民健康保険に加入するけど、無職で収入がないから国民健康保険料(税)は払わなくていいんだよね?」という質問を受けましたが、同じような疑問をお持ちの方もいると思います。
残念ながら、、、無職で収入がない場合でも、国民健康保険に加入している以上は保険料を払う必要があります。
そこで今回は、なぜ無職で収入がないのに国民健康保険がかかるのか?国民健康保険の仕組みと、無職で収入のない人の国民健康保険料は月々いくらになるのか?計算方法(令和6年度版)を解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。
なぜ、無職で収入がないのに国民健康保険料(税)がかかるの?
まず、「なぜ無職で収入がないのに国民健康保険料が発生するか?」国民健康保険料の仕組みから解説していきます。
国民健康保険料(税)は、下の図のように『医療分』『支援分』『介護分』という3つ区分から構成されてます。
『医療分』とは
国民健康保険に加入している人の医療費などに充てられる保険料で、国民健康保険に加入しているすべての人が負担する保険料です。
『支援分』とは
後期高齢者の医療費の一部を負担するために、国民健康保険に加入している0歳から74歳までの人が負担する保険料です。
『介護分』とは
介護保険制度(お年寄りや寝たきりの方など、介護が必要になった方が安心して介護サービスを利用できるようにする制度)の介護納付金として、40歳から64歳までの人が負担する保険料です。
(※年間の医療分・支援分・介護分保険料には市区町村ごとに最高限度額が設定されています。)
さらに、この3つの区分の中には「所得割」「均等割」「平等割※」というものが設定されていて、それぞれを計算したあとに合計することで国民健康保険料が決まる仕組みになっています。(※平等割については負担しない市区町村もあります。)
「所得割」とは
国民健康保険に加入している人の中で所得のある人が負担する保険料です。
専業主婦やお子さん(赤ちゃん)、無職の人で(前年中に)所得がない場合は0円となります。
「均等割」とは
国民健康保険に加入している人が均等に負担する保険料です。(※「均等割」の金額は市区町村ごとに設定されています。)
つまり、無職で収入がない人でも「均等割」は負担することになっているため、保険料が発生する仕組みになっています。
また、国民健康保険には「扶養」という概念がないため、専業主婦やお子さん(赤ちゃん)でも国民健康保険に加入している場合は、この「均等割」を負担することになります。
令和5年度も小学校入学前のお子さん(平成29年4月2日以降生まれ)の均等割が5割減額となります。(※世帯で7割の減額を受けている世帯では8.5割、5割の世帯では7.5割、2割の世帯では6割減額となります。)
「平等割」とは
国民健康保険に加入している世帯ごとに負担する保険料です。(例、1世帯につき〇〇円)
こちらも所得に関係なく負担することになっていますので、無職で収入がない場合でも保険料が発生します。
ただし、平等割は負担しない市区町村もありますので、お住まいの市区町村ホームページなどで確認してみてください。
このように無職で収入がない場合でも『医療』『支援分』『介護分』の「均等割」と「平等割」の保険料は負担する必要があるため、国民健康保険料が発生してきます。
無職で前年中に所得がない人の国民健康保険料を計算する場合は「所得割」が0円になりますので、計算式は次のようになります。
<無職の人の国民健康保険料の計算式>
国民健康保険料=医療分(均等割+平等割)+支援分(均等割+平等割)+介護分(均等割+平等割)
そして、この12ヶ月分の保険料を、その年の6月~翌年3月まで10回(※)に分けて支払う仕組みになっています。
(※市区町村によっては9回に分けて支払う場合もあります。また、4月・5月の国民健康保険料は6月以降の保険料に均等に上乗せされています。)
つまり、令和6年度(令和6年4月~令和7年3月)の国民健康保険料は、令和5年1月~令和5年12月の所得に対して決定し、令和6年6月~令和7年3月までの10回に分けて支払うことなります。
現在無職でも前年中に給与収入などの所得がある場合は「所得割」も発生しますので、注意してください。
国民健康保険には保険料の軽減制度があります!
世帯主(国保に加入していない世帯主を含む)と国民健康保険加入者の合計所得金額が、下記の金額に満たないときには、「均等割」と「平等割」の額を軽減する制度が用意されています。
軽減割合 | 世帯主と加入者全員の総所得金額の合計 |
---|---|
7割減額 | 43万円+10万円×(年金・給与所得者の数-1)以下の世帯 |
5割減額 | 43万円+(29.5万円×加入者数)+10万円×(年金・給与所得者の数-1)以下の世帯 |
2割減額 | 43万円+(54.5万円×加入者数)+10万円×(年金・給与所得者の数-1)以下の世帯 |
(※未就学児(小学校入学前)のお子さんがいる場合、7割の減額を受けている世帯では8.5割、5割の世帯では7.5割、2割の世帯では6割減額となります。)
つまり、1人暮らしの無職の人で前年中に所得がなかった場合は「均等割」と「平等割」の7割が減額されることになります。
詳しくは、このあとの計算例で解説していきます。
会社の倒産や解雇などで失業した場合は、前年中に所得があっても国民健康保険の軽減制度を利用することができます。
無職で収入がない人の国民健康保険料は月々いくら?
今回は2つのモデルケースを使い、月々の国民健康保険料の計算方法を解説していきます。(※それぞれ、令和6年度の保険料額で計算しています。)
計算例1
※Aさんが住んでいる渋谷区には「平等割」がありませんので、『医療分』『支援分』『介護分』の「均等割」を求め、最後に合計した金額が年間の国民健康保険料となります。
『医療分』の「均等割」を計算する
渋谷区の『医療分』の「均等割」は年間49,100円です。(←均等割の金額は市区町村のHPで確認することができます。)
Aさんは1人暮らしで世帯全体の所得は0円となりますので「均等割の7割減額 43万円+10万円×(年金・給与所得者の数-1)以下の世帯」が適用されます。
つまり、49,100円 × 30% = 14,730円
『医療分』の「均等割」は14,730円(年間)となります。
『支援分』の「均等割」を計算する
渋谷区の『支援分』の「均等割」は年間15,100円です。(←均等割の金額は、市区町村のHPで確認することができます。)
こちらも先程と同様に「均等割の7割減額」が適用されます。
16,500円 × 30% = 4,950円
『支援分』の「均等割」は4,950円(年間)となります。
『介護分』の「均等割」を計算する
『介護分』は40歳から64歳までの人が負担するため、今回は0円です。
月々の国民健康保険料を計算する
最後に、『医療分(均等割)』+『支援分(均等割)』+『介護分(均等割)』を合計して、
14,730円 + 4,950円 + 0円 = 19,680円
年間の国民健康保険料は19,680円となります。
これを10回に分けて支払いますので、月々の国民健康保険料は約2,000円となります。
計算例2
※平塚市には「平等割」もありますので、『医療分』『支援分』『介護分』の「均等割」と「平等割」を求め、最後に合計した金額が年間の国民健康保険料(税)となります。
『医療分』を計算する
『医療分』は「均等割」と「平等割」の合計なので、まず「均等割」から計算していきます。
平塚市の『医療分』の「均等割」は年間28,530円です。
Bさんも1人暮らしで世帯全体の所得は0円となりますので(33万円以下の世帯)「均等割の7割減額」が適用されます。
28,530円 × 30% = 8,559円
『医療分』の「均等割」は8,559円(年間)となります。
次に「平等割」を計算します。
平塚市の『医療分』の「平等割」は年間18,500円(1世帯あたり)ですが、こちらも軽減(平等割の7割減額)が適用されますので、
18,500円 × 30% = 5,550円
『医療分』の「平等割」は5,550円(年間)となります。
あとは「均等割」と「平等割」を合計して、
8,559円 + 5,550円 = 14,109円
『医療分』は14,109円となります。
『支援分』を計算する
『支援分』も「均等割」と「平等割」の合計なので、まず「均等割」から計算していきます。
平塚市の『支援分』の「均等割」は年間11,440円です。
こちらも先程と同様に「均等割の7割減額」が適用されますので、
11,440円 × 30% = 3,432円
『支援分』の「均等割」は3,432円(年間)となります。
次に「平等割」を計算します。
平塚市の『支援分』の「平等割」は7,420円(1世帯当たり)です。
こちらも先程と同様に「平等割の7割減額」が適用されますので、
7,420円 × 30% =2,226円
『支援分』の「平等割」は2,226円(年間)となります。
あとは「均等割」と「平等割」を合計して、
3,432円 + 2,226円 = 5,658円
『支援分』は5,658円となります。
『介護分』を計算する
『介護分』も「均等割」と「平等割」の合計なので、まず「均等割」から計算していきます。
平塚市の『介護分』の「均等割」は年間11,690円です。
こちらも先程と同様に「均等割の7割減額」が適用されますので、
11,690円 × 30% = 3,507円
『介護分』の「均等割」は3,507円(年間)となります。
次に「平等割」を計算します。
平塚市の『介護分』の「平等割」は(1世帯当たり)5,770円ですが、「平等割の7割減額」が適用されますので、
5,770円 × 30% = 1,731円
『介護分』の「平等割」は1,731円(年間)となります。
あとは、「均等割」と「平等割」を合計して、
3,507円 + 1,731円 = 5,238円
『介護分』は5,238円となります。
月々の国民健康保険料(税)を計算する
最後に『医療分』+『支援分』+『介護分』を合計して、
14,109円 + 5,658円 + 5,238円 = 25,005円
年間の国民健康保険料(税)は25,005円となります。
これを10回に分けて支払いますので、月々の国民健康保険料(税)は約2,500円となります。
最後に
今回は、無職で収入のない人の国民健康保険料の計算方法を解説してきましたが、同じように計算しても「自分の国民健康保険料は高すぎる!」という人は、国民健康保険料の軽減が適用されていない可能性があります。
無職で収入がなかったから「確定申告をしていない」「住民税の申告をしていない」という場合は、国民健康保険料の軽減判定ができませんので、お住まいの市区町村で住民税の申告をするようにしてくださいね。(←いつでも申告することができます。)
▶住民税:無職で収入がない人の申告方法と申告書の書き方を記入例で確認