結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になる方や、仕事を辞めてしばらく休養する方の中には、「夫の扶養に入る」ことを考えている方も多いと思います。
夫の扶養に入ると健康保険料や年金保険料が免除されるというメリットがありますが、退職後に扶養の範囲内で働く場合は、いくつかの条件をクリアしなければいけません。
そこで今回は、退職後に扶養入るための収入条件、手続き方法などをまとめてみました。
また、扶養中にアルバイトやパートで収入がオーバーしたらどうなるのか?本日、年金事務所に確認してみましたので、よろしければ参考にしてみてください。(今回は妻が退職後に夫の扶養に入るケースを解説しています。)
退職後、夫の扶養に入る条件
ご存知の方も多いと思いますが、扶養には大きく分けて「税金(所得税)」と「社会保険(健康保険・厚生年金)」の2通りあります。
よく言われる「103万円の壁」と「130万円の壁」ですね。
今回は、退職後の「社会保険の扶養」について、解説していきます。
退職後、専業主婦になる方は問題ありませんが、扶養に入りながら働くことを考えている方は、いくつかの条件をクリアしなければいけないので、このあと順番に解説していきます。
年収130万円未満
妻が夫の扶養に入るための収入条件には「130万円未満」とありますが、年の途中で仕事を辞め、夫の扶養に入る場合は、過去の収入ではなく未来の見込み収入額で判断します。
退職時に「その年の1月1日からの収入が、既に130万円を超えているから夫の扶養に入れない…」と、勘違いしている人もいますが、社会保険(130万円の壁)の場合は、退職後の見込み収入で判断しますので、安心してください!
退職後、無職(専業主婦)になる方はもちろん、パート・アルバイトなどをする方でも、給与(交通費等含む)が月108,333円以下※であれば夫の扶養に入ることができます。
ただし、社会保険の収入には、失業手当、年金、傷病手当金、出産手当金も含まれますので注意してください。
▶ 失業手当をもらうと扶養に入れない!?失業手当と扶養はどっちがお得?
勤務先の社会保険加入条件をチェック!
※給与(交通費等含まず)が月108,333円以下(年収130万円未満)でも、以下の①~⑤すべてに該当する場合は、勤務先で社会保険に加入することになりますので、注意してください。
①パート先の従業員数が101人以上(2024年10月からは従業員数51人以上が対象になる予定)
②週の労働時間が20時間以上
③月額賃金88,000円以上(年収106万円)
④2ヶ月以上雇用が見込まれる
⑤学生ではない
このように月108,333円以下(年収130万円未満)でも、パート先の従業員数が101人以上いる場合は月88,000円以上(年収106万円)で、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象となります。
社会保険に加入するということは、社会保険料を支払う必要があるため、手取りが減ることになります。こちらの記事では、「手取りはいくら減るのか?」や「これまでどおり扶養のまま働くにはどうすればいいのか?」を解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。
夫の年収の2分の1未満
年収が130万円未満の場合でも、夫の年収の2分の1を超える場合は、扶養に入ることができません。
例えば、パート収入が月10万円(年収120万円)ある妻の場合、年収130万円未満の条件をクリアしていますが、夫の年収が200万円だった場合は、妻の年収は夫の年収の半分以上となるので、夫の扶養に入ることができません。
(※ただし、妻が夫の年収の半分以上あった場合でも、夫が生計維持の中心的役割を果たしていると認められれば、夫の扶養に入ることができますので、該当する方は会社や年金事務所に相談するようにしてください。)
退職後、扶養に入りながら働く場合の条件をまとめると、次の通りになります。
令和2年4月から扶養に入る条件に「(被扶養者は)日本国内に住民票があること」が追加されることなりました。(※留学するお子さんや海外赴任の夫に同行する妻など、一部例外もあります。)
扶養中に収入がオーバーしたらどうなる?
扶養に入ったあとに月の給与が108,333円を超えたら、いきなり扶養から外れなければいけないのか?気になる方も多いと思います。
2023年9月までは、年収ベースで130万円未満になるように調整できれば、そのまま扶養に留まることができましたが、2023年10月~は、年収が130万円超えても連続して2年までは扶養内に留まることができるようになります。
つまり2023年と2024年の2年間は130万円の壁を気にせず働くことができるということです。
ただし、これにはパート先の会社が「これは一時的な収入増ですよ※」と証明し、それを健康保険組合が個別に判断することになります。(※一時的な収入増の証明は簡素化された処理で済むように調整されています。)
例えば「2023年と2024年の2年間は130万円以上稼ぐ→2025年は130万円未満になるよう収入を抑える→その次の2年また130万円以上稼ぐ」ということはできませんので注意してください。
2年間までとしても働きたい人が限度を気にせず働けるということは、個人的にも良いことだと思います。
それでは、次に扶養に入る手続き方法を確認していきましょう。
扶養に入る手続き
必要書類
退職後、夫の扶養に入る手続きで必要な書類は次の通りです。
離職票が届かないという方は、よろしければ、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶ 退職後に離職票が届かない!郵送されるまでの期間と届かない時の対処法
ハローワークで失業手当をもらう場合は、受給期間中は扶養に入れない場合がありますので、注意してください。
▶ 失業手当をもらうと扶養に入れない!?失業手当と扶養はどっちがお得?
どこで?
扶養に入る手続きは、夫の勤務先で手続きをすることになりますので、本人がやることは必要書類を揃えて提出するだけです。あとは、会社と年金事務所の間で手続きが進められます。
いつまで?
退職後5日以内に手続きすることになっていますが、手続きに必要な書類「離職票1.2」が送られてくるまで1週間以上かかる場合があります。
この場合は、「離職票1.2」が届いてから手続きを進めてください。
離職票が届かなくて手続きを進めることができない場合は、「一旦、国保・国民年金に加入する必要があるか?」気になるところですよね。
本日、市役所の国民年金課で確認してみましたが、退職後、扶養に入ることが決まっている場合は、国民健康保険・国民年金への加入はしなくてよいそうです。
この期間は無保険状態となりますが、保険資格は退職日の翌日までさかのぼって取得できるのため、病院で診察を受けた場合は、一旦、全額自己負担で支払い、後日、保険負担分の返金手続きをすることができます。
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、退職日が一日違うだけで2ヶ月分を支払う場合があります。
退職後、保険証が届くまでのスケジュール
退職してから保険証が手元に届くまでのスケジュールを確認しておきましょう。
保険証が届くまでの期間は、会社が「健康保険被扶養者(異動)届」を提出してから、約10日~2週間です。
保険証が届くまでの間に病院で診察を受ける場合は、一旦、全額自己負担で医療費を支払うことになりますが、後日、保険負担分を返金してもらうことができます。
また、年金事務所では保険証が発行されるまでの間、保険証の代わりとなる「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらうことができます。
▶ 保険証が届くまで病院で使える「健康保険資格証明書」を即日取得する方法
最後に
退職後は、失業手当の申請をする人が多いと思いますが、社会保険上は「失業手当は収入としてカウントする」ことになっています。つまり、退職後は無職であっても失業手当を受給している間は、扶養に入れないことが多いので注意してください。
こちらの記事では、失業手当をもらいながら扶養に入ることができる人の条件を確認することができますので、よろしければ参考にしてみてください。
▶ 失業手当をもらうと扶養に入れない!?失業手当と扶養はどっちがお得?