以前、育児休業中の社会保険料免除についての記事を書きましたが、先日、職場で「育児休業終了後の社会保険料は育児休業前(高いまま)の報酬月額で計算されるの?」という質問を受けました。
育児休業から復帰すると、「時短勤務」や「残業ができない」などの理由から、給与が育児休業を取る前よりも減ることがありますが、この場合は減った給与に対して報酬月額を見直し健康保険・厚生年金保険料を安くする制度が用意されています。
そこで今回は、育児休業終了後の健康保険・厚生年金保険料の特例制度について解説します。
育児休業終了後の健康保険・厚生年金保険料の特例制度
通常であれば、定時決定か随時改定に該当するまで標準報酬月額の見直しは行われず、社会保険料は育児休業前の高い額のままになることがありますが、育児休業終了後に一定の条件を満たす場合は、随時改定に該当しなくても標準報酬月額の改定を行い、保険料の負担を少なくすることができる制度が用意されています。
例えば、下記の画像のように、育児休業前の報酬月額が「30万円」で育児休業後の報酬月額が「24万円」になった場合
健康保険・厚生年金保険料(39歳まで)は「42,210円」から「33,768円」となりますので、約8,400円保険料を安くすることができます。
このように、育児休業終了後に時短勤務などで給与が減った場合は、それに合わせて標準報酬月額を変更し、保険料の負担を減らすことができる制度が用意されています。
ただし、育児休業終了後の報酬月額の変更は任意となっています。
それは、報酬月額が下がることで社会保険料は低くなりますが、傷病手当金や出産手当金の支給額も低くなる(支給額の計算に標準報酬月額を使用するため)ケースがあるからです。
傷病手当金や出産手当金を申請する予定のある方は、どちらが得か?天秤にかける必要がありますね。
▶傷病手当金はいくらもらえるの?支給額の調べ方と計算方法を解説!
報酬月額が下がり、社会保険料が低くなるということは、将来受け取る年金額も減る可能性があるんじゃないの?という疑問をお持ちの方もいると思いますが、年金額の計算にも特例が用意されています。
詳しくは、このあとの「厚生年金保険料の年金額計算の特例」でご説明します。
では先に、育児休業終了後に報酬月額を変更できる人の条件を確認していきましょう。
育児休業終了後に報酬月額を変更できる人の条件
育児休業終了後に報酬月額を変更を行うためには、以下の2つの条件をクリアする必要があります。
育児休業終了後の報酬月額変更は、通常の随時改定と比較すると、次のように該当しやすくなります。
手続き方法
勤務先から日本年金機構へ「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出して、手続きが進められますので、申請を希望する方は、勤務先に申出てください。
厚生年金保険料の年金額計算の特例
通常、定時決定や随時改定で標準報酬月額も下がると、その影響で将来受け取る年金額も下がる可能性が出てきますが、育児休業終了後については、子どもが3歳になるまでの養育期間、将来受け取る年金額の計算において、育児をする前(養育前)の標準報酬月額を用いて計算できる特例があります。
この特例は、養育期間中の標準報酬月額を、養育する前の標準報酬月額とみなすことにより、養育期間中の標準報酬月額の低下を将来の年金額に影響させないようにするものです。
養育特例の適用を受ける期間について、毎月の社会保険料の額は、実際の標準報酬月額で計算されることになります。
つまり、あくまでも将来の年金に対する特例であり、健康保険には適用されず、傷病手当金等の計算には、実際の標準報酬月額が用いられます。
対象期間
対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月までです。
女性の場合は、産前産後休業や育児休業を取った流れで、提出するケースが多いですが、男性の場合は、認識不足による提出漏れが生じやすいため、注意してください。(※申出が遅れた場合でも、申出日の前月までの2年間について特例の適用が認められます。)
手続き方法
勤務先と日本年金機構の間で手続きを行ないますので、申請を希望する方は、以下の書類を用意して、勤務先に届出てください。
必要書類
社会保険の手続きにおける添付書類は、写しでの提出が認められているものも多いですが、この手続きでは、原則、提出日からさかのぼって60日以内に発行された戸籍謄(抄)本または、戸籍記載事項証明書の原本と住民票の写しが必要になりますので、注意してください。
最後に
今回の特例は、どちらも本人から希望があった場合のみ手続きが進められる制度です。特に男性の場合は「そもそも制度自体知らない」という方も多いと思いますので、注意してくださいね。