育児のために会社を休み、その間に会社から給与がもらえない場合は、代わりにハローワークから休業中の所得補償として「育児休業給付金」を受給することができます。

実際に私の勤務先でも申請したことがありますが、申請者(本人)は、制度の内容や支給額を全く把握していませんでした。。。

そこで今回は、育児休業給付金について、受給条件支給額の調べ方申請方法などをまとめてみましたので、よろしければ参考にしてみてください。

育児休業給付金がもらえる期間

育児休業給付金 申請方法

育児休業給付金は、1歳未満(※)の子どもを養育するために育児休業を取得し、一定の条件を満たした場合に雇用保険から支給される手当です。


※原則的に育児休業の期間は子どもが1歳に達する日の前日(1歳の誕生日の前々日)までとなっていますが、父母ともに育児休業を取得する場合は、育児休業を2ヶ月間延長できる制度(パパママ育休プラス)があり、この制度を利用する場合は育児休業給付金も延長した期間に対して支給されることになっています。


また、保育所に入れない等の理由で1歳を超えて育児休業を延長する場合には、申請を行うことで1歳6ヶ月に達する日の前日まで、また、平成29年10月1日からは、さらに6ヶ月(2歳に達する日の前日まで)の再延長も認められるようになりました。


育児休業 期間


Check!
育児休業の延長は、あくまでも特別な理由により育児休業を延長せざるを得ないときに利用できる制度になっていますので、育児休業開始当初から1歳を超えて育児休業を取得する予定がある場合は、育児休業給付金は1歳に達する日の前日(1歳の誕生日の前々日)までの支給となります。

例えば、会社の育児休業制度が3年あり、当初から3年の育児休業を予定している場合は、育児休業給付金は1歳に達する日の前日(1歳の誕生日の前々日)までの支給となりますので、注意してください。


つまり、条件をクリアすれば、最低でも出産後8週間(56日)を過ぎた後から子どもが1歳になるまでの約10ヶ月にわたって受給することができる手当です。



では、次に育児休業給付金を受給するための条件を確認していきましょう。

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育児休業給付金の受給条件

「雇用保険の被保険者期間(加入期間)が、育児休業を開始した日以前の2年間に1年以上(※)あること」

(※賃金が支払われる基礎となった日(賃金支払基礎日数)が11日以上ある月が12ヶ月以上必要です。)


「育児休業を開始した日」とは

産後休業から引き続いて育児休業を取得した女性の場合は、出産日から起算して58日目で、男性が育児休業を取得する場合は、配偶者の出産日当日から支給対象となります。


「賃金が支払われる基礎となった日(賃金支払基礎日数)」とは

月給制の場合:基本給の支払い対象となっている日数(一般的には暦の日数)となりますが、会社(日給月給制)によっては、欠勤して減額された場合はその日数分を減らしてカウントする場合があります。

日給・時給制の場合:出勤した日数

有休等、出勤していなくても賃金が支払われている場合は日数にカウントします。また、遅刻や早退で賃金が減額された場合でも1日として日数にカウントします。



育児休業中に会社から給与をもらった場合は?

育児休業給付金は、育児休業中に無給になったり賃金が減額されることに対する所得補償制度です。


つまり、育児休業が有給の休業であったり、育児休業中に勤務することで給与が支給される場合は、その額によって育児休業給付金が減額されたり、支給されない場合があります。


育児休暇中に引き継ぎのため出勤したり、在宅勤務をして会社から給与が支払われることもあると思いますが、この場合は育児休業の支給単位期間ごとに勤務している日数が10日以下(10日を超える場合は勤務時間が80時間以下)で、1日でも休業していれば支給対象となります。


ただし、このときの支給額は、休業している日数分となります。

有期雇用労働者の場合

契約社員など期間の定めがある働き方をしている人でも、上記の条件に加え、次の2つの条件をクリアすれば、育児休業給付金を受給することができます。

  • 同一事業主のもとで1年以上雇用が継続していること
  • 同一事業主のもとで子どもが1歳6ヶ月(※)までの間にその労働契約が満了することが明でないこと

(※1歳6ヶ月後も育児休業を2歳まで再延長する場合は、1歳6ヶ月後の休業開始時において2歳までの間に労働契約が満了することが明らかでないことが条件となります。)

Check!
契約期間が1年ごとに更新される場合でも「更新の予定」があれば、育児休業給付金を申請することができるので、契約先の担当者に確認してみて下さい。



続いて、育児休業給付金の支給額について解説していきます。

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育児休業給付金の支給額の調べ方

育児休業給付金の支給額(育児休業中に給与が支払われない場合)は、次の計算式で求めることができます。

育児休業給付金の支給額 = 休業を開始する前の賃金日額 × 支給日数 × 給付率

<休業を開始する前の賃金日額とは>

育児休業を開始する前の6ヶ月間の賃金 ÷ 180 

※産前・産後休業を取得した場合は、産前・産後休業開始前の6ヶ月間の賃金となります。

また、賃金日額には(年齢別に)上限がありますので、計算の結果、上限額をオーバーする場合は上限額となります。(賃金日額の下限額は年齢に関係なく、2,746円です。)

年齢 賃金日額の上限額
29歳以下 13,890円
30歳~34歳まで 15,430円
45歳~59歳まで 16,980円

(※令和5年8月1日~令和6年7月31日までの金額です。)



<支給日数とは>

育児休業給付金は1ヶ月単位で考えることになっており、支給単位期間(育児休業を休業開始から1ヶ月ごとに区切った期間)の1ヶ月間すべてが育児休業の場合は「30日」を計算式に当てはめて計算します。

ただし、育児休業から復帰するときなど、支給単位期間の中に休業終了日が含まれる場合は、「育児休業を取得した暦の日数」(最後の支給単位期間の初日から休業終了日までの日数)を使います。



<給付率とは>

育児休業開始6ヶ月間(180日)は「67%」、6ヶ月より後は「50%」を計算式に当てはめて計算します。


では、例を使って具体的に計算をしてみましょう。

月収21万円の場合(※育児休業中に給与の支払いがない場合)

まず、育児休業を開始する前の賃金日額から計算します。

(210,000円×6ヶ月)÷ 180 = 7,000

賃金日額は7,000円です。(※先ほどの表のとおり、賃金日額が上限をオーバーしている方は、上限額を使い計算を進めます。)


育児休業期間中の最初の6ヶ月間の支給額は、

7,000円 × 30日 × 67% = 140,700円(1ヶ月単位)

残りの4ヶ月間の支給額は、

7,000円 × 30日 × 50% = 105,000円(1ヶ月単位)

支給額には上限額が定められています。令和5年8月1日~の上限額は、次のとおりです。

67%の上限額:310,143円 

50%の上限額:231,450円 

(令和5年8月1日~令和6年7月31日までの金額です。)


今回の例で育児休業を10ヶ月間取得した場合、トータルすると約126万円が支給されることになりますね。(正確な金額は会社がハローワークへ提出する「休業開始時賃金月額証明書」で決定します。)

「意外と少ないなぁ・・・」と思うかもしれませんが、育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が全額免除されるため、手取り額という意味では意外と多くなると思います。

育児休業中は社会保険料が全額免除!免除される期間と申請方法を確認


育児休業中に会社から給与が支給された場合

育児休業期間中に会社から給与が支給された場合は、育児休業給付金の一部が減額されたり、支給されない場合があります。


会社から給与が支給された場合の支給額を調べるには、次の①~③に該当するものを選び計算をしていきます。

①支給された賃金が「休業を開始する前の賃金日額」×「支給日数」の13%(給付率が50%の場合は30%)以下の場合

育児休業給付金は全額支給されます。


②支給された賃金が「休業を開始する前の賃金日額」×「支給日数」の13%(給付率が50%の場合は30%)を超え80%未満の場合

支給額 =(休業を開始する前の賃金日額×支給日数×80%)- 支給された賃金


③支給された賃金が「休業を開始する前の賃金日額」×「支給日数」の80%以上の場合

育児休業給付金は0円となります。


例えば、休業を開始する前の賃金日額が7,000円(月収21万円)の場合で育児休業期間(支給単位期間)中に会社から10万円の賃金が支給された場合


②の計算式で支給額を求めます。



支給額 =(休業を開始する前の賃金日額×支給日数×80%)- 支給された賃金

7,000円×30日×80%=168,000円

168,000円-100,000円=68,000円

育児休業給付金の支給額は68,000円となります。


それでは、続いて育児休業給付金の申請方法を確認していきましょう。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金の申請は、勤務先を経由してハローワークへ申請します。


このときの手続きの流れは次のとおりです。


①「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「育児休業給付受給資格確認票」をハローワークに提出する
これは、「そもそも育児休業給付金の受給資格をクリアしているか?」を確認するためのもので、主に会社が記入して提出することになりますが、署名や(マイナンバー)振込先の口座情報は申請者本人が記入することになっています。(手続きの期限は、初回申請を行う日までです。)


②「育児休業給付受給資格確認(否認)通知書」を受け取る
このタイミングで育児休業給付金の受給資格の有無を確認することができます。


③育児休業給付金の初回支給申請を行う
「育児休業給付支給申請書(初回)」に必要事項を記入して申請を行います。こちらも主に会社が記入して提出することになりますが、署名や振込先の口座情報は申請者本人が記入することになっています。


④育児休業給付金(初回分)が指定した口座に入金される


⑤育児休業給付金の2回目以降の支給申請を行う
2回目以降の申請は、予めハローワークから会社宛てに送られてきた支給申請書で行います。

また、2回目以降の支給申請は基本的に2ヶ月ごとに1回、2ヶ月分をまとめて行いますが、申請者本人が希望する場合は1ヶ月ごとに1回、1ヶ月分を申請することも可能です。

最後の申請では2ヶ月に満たない期間を申請するケースがほとんだと思いますが、この場合は残った期間のみ申請することが可能です。

Point!
「①育児休業給付受給資格票の提出」「③育児休業給付金の初回支給申請」は同時に行うことができますので、どちらで申請するか勤務先と相談して決めてください。

(同時に行う際の提出期限は、休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日までです。)


最後に

育児休業給付金は、育児に専念しながら休業前の給与の67%(50%)が支給される大変お得な給付金です。

また、育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金)も免除されるため、手取り額が大幅に減るということもありませんが、住民税は免除されないので注意してくださいね!

こちらの記事では、育児休業中の住民税の支払いについてまとめていますので、よろしければ参考にしてみてください。
育児休業中の住民税の支払はどうなる?支払方法と免除・猶予制度を確認


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