年末調整のときに会社へ提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」や、年金を受給している方が提出する「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」には、配偶者や扶養親族の『所得の見積額』を記載する欄がありますが、中には「給与収入の他に年金収入もあり、書き方がわからない!」という方がいると思います。

(例えば、特別支給の老齢厚生年金+パート収入など。)

そこで今回は、給与(パート・アルバイト含む)と年金を両方もらっている方の『令和6年中の所得の見積額』の記入方法を解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。

給与収入と年金収入がある方の所得の見積額

所得の見積額 計算方法

パートやアルバイトなどの給与と年金の両方から収入がある場合は、給与の所得見積額年金の所得見積額を計算した上で足し合わせます。


計算式にすると、↓こうなります。


所得の見積額=給与所得の見積額+年金所得の見積額

Point!
所得の見積額は、来年1年間にもらう予定の所得額を記載しますが、ここには給与や年金等の収入額をそのまま記載するのではなく、収入から必要経費(給与所得控除や公的年金等控除など)を引いた額を記載します。

そこで、まずは「給与所得の見積額」の計算方法から確認していきましょう。


給与所得の見積額

給与収入(パートやアルバイト含む)の方の所得の見積額は、次の計算式を使い求めます。


所得の見積額=給与収入-給与所得控除額


「給与所得控除額」とは、給与収入を得ている人を対象にした経費です。


給与所得控除額は、収入額に応じて変動しますが、給与収入が1,618,999円以下の場合は55万円となります。※2020年(令和2年)から給与所得控除が65万円→55万円に引き下げられています。


例えば、給与収入が90万円の場合の所得の見積額は、90万円(給与収入)-55万円(給与所得控除額)=35万円となります。

令和2年 年末調整 所得の見積額

計算の結果がマイナスになる場合は「0円」となります。


続いて、「年金所得の見積額」の計算方法を確認していきましょう。


年金所得の見積額

年金所得の見積額は、年齢や受け取る年金額に応じて控除額が異なります。

今回はパート・アルバイトの方を対象にしているため、年金以外の所得が1,000万円以下の場合で解説します。

年 齢 受け取る年金額 公的年金等控除額
65歳未満 130万円以下 60万円
65歳以上 330万円以下 110万円

(※2種類以上の年金収入がある場合は、合計して計算します。ただし、所得税の場合、遺族年金・障害年金は非課税となりますので、年金収入には含みません。)

例えば、63歳で年金収入が80万円の場合、所得の見積額は80万円-60万円=20万円となります。

令和2年 年金 見積額 計算

計算の結果がマイナスになる場合、所得の見積額は「0円」となります。


あとは、それぞれの所得の見積額を合計します。



所得の見積額=給与所得の見積額+年金所得の見積額


さらに、ここで計算された所得の見積額が10万円を超える場合は、給与所得控除に「所得金額調整控除」が加算されます。

所得金額調整控除額 = 年金所得の見積額(10万円を超える場合は10万円) + 給与所得の見積額(10万円を超える場合は10万円) -10万円


よって、給与所得の見積額 = 給与収入 – 給与所得控除額 – 所得金額調整控除 となり、ここで計算された「給与所得の見積額」と「年金所得の見積額」を合計したものが、所得の見積額となります。



少しわかりにくいと思いますので、具体例で確認してみましょう。

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特別支給の老齢厚生年金とパート収入(給与)がある場合の所得の見積額は?

Aさんの配偶者Bさん(64歳)は、特別支給の老齢厚生年金(70万円)とパート収入(100万円)があります。


配偶者Bさんの所得の見積額はいくらになるでしょうか。


<配偶者Bさんの所得の見積額>

給与所得の見積額は、100万円(パート収入)-55万円(給与所得控除額)=45万円

年金所得の見積額は、70万円(年金収入)-60万円(公的年金等控除額65歳未満)=10万円


所得の見積額は、45万円+10万円=55万円

合計した所得の見積額が10万円を超えているため、「所得金額調整控除額」が登場します。



所得金額調整控除額 = 給与所得の見積額10万円(給与所得の見積額45万円は10万円を超えているので上限額) + 年金所得の見積額10万円(年金所得の見積額10万円は10万円を超えていませんので、そのままの額) -10万円

所得金額調整控除額は10万円となります。



あとは、給与所得の見積額を再計算します。


100万円(パート収入) – 55万円(給与所得控除額) – 10万円(所得金額調整控除額) = 35万円


給与所得の見積額は35万円になりましたので、


35万円(給与所得の見積額)+ 10万円(年金所得見積り額)=45万円(所得の見積額)



Bさんの所得の見積額は45万円となります。


Point!
①所得の見積額が95万円を超えた場合源泉控除対象配偶者には該当しない

②所得の見積額が48万円を超えた場合控除対象扶養親族には該当しない

上記の①と②の場合は、申告書への記載は不要です。


令和6年分の「給与所得者の扶養控除等申告書」「年金受給者の扶養親族等申告書」に記載する所得の見積額は、申告書を提出する日に見積もった令和6年分の合計所得額(来年1年間にもらう見込み所得額)を記入します。


また、配偶者や扶養親族の年齢については、令和6年12月31日時点の年齢で判定しますので、間違えないようにしてくださいね。


最後に

令和2年から年末調整の電子化が実施されています。

勤務先が年末調整の電子化に対応していない場合は、今まで通り申告書を提出する必要がありますが、国税庁からリリースされている「年末調整ソフト」を利用して作成したデータをプリントアウトして提出することもの可能なのでPCやスマホ操作に慣れている方はチェックしてみてください。

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