出産のため産休を取る女性で、その間に会社から給与が支給されなかった場合は、産休前にもらっていた給与の3分の2(約67%)が支給される手当があるのをご存知ですか?

この手当は「出産手当金」といって、勤務先で加入している健康保険から支給されることになっています。

そこで今回は、出産手当金(協会けんぽ)の受給条件、支給期間、支給額の計算と申請方法について解説します。こちらの記事は、実際に私の職場で申請したときの内容をもとに作成していますので、よろしければ参考にしてみてください。

出産手当金がもらえる人の条件

出産手当金のもらい方 申請方法
出産手当金を申請できるのは「勤務先で健康保険に加入している人」です。


出産手当金は出産のために会社を休み、その間に給与が支給されなかった場合の所得補償として、健康保険から従業員本人に支給される手当です。

つまり、支給対象者は健康保険に加入している従業員本人のみであり、健康保険に加入していないパート・アルバイトや被扶養者である家族が出産をした場合には支給されませんので、注意してください。


Check!
健康保険では、妊娠85日(4ヶ月)以後の早産、流産、人工妊娠中絶を出産として扱うことになっているため、これらの場合にも出産手当金の申請が認められています。

出産手当金がもらえる期間

出産手当金は、産休中(産前・産後)の所得を補償してくれる制度で、出産(予定)日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日後56日間までの範囲で、会社を休んだ期間(公休日等も含める)に対して支給されます。

出産予定日に出産した場合または出産予定日より早く出産した場合

出産手当金 支給期間

出産日(出産予定日)以前42日間 + 出産日後56日間 = 98日間


出産予定日より遅れて出産した場合

出産予定日と実際の出産日が異なることはよくあることです。

出産手当金は、出産予定日よりあとから出産日までの間(α日間)も支給対象となりますので、この期間も加えて申請することができます。(実際の出産日より後56日間が産後休業となります。)

出産手当金 支給期間②

出産予定日以前42日間 + α日間 + 出産日後56日間 = 98日+α日間


上記で確認できるように、少なくても98日間分の出産手当金が支給される仕組みになっています。(※ただし、会社から給与が支給される場合は出産手当金の全部または一部が支給されないことになっていますので、注意してください。)


出産を機に退職する場合は?

出産を機に退職する場合でも、次の3つの要件を満たせば出産手当金を受給することができます。

  • 退職日までに1年以上継続して健康保険の被保険者であること(任意継続期間は除く)
  • 退職日に出勤していないこと(退職日に有休はok)
  • 出産日(出産が予定日より後のときは出産予定日)以前42日よりあとの期間中に退職していること

退職後の出産手当金については、こちらの記事で詳しく解説していますので、調べている方がいたら参考にしてみてください。
<退職後の出産手当金>引き続きもらうための条件と申請方法を解説

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支給額の調べ方

出産手当金の支給額は、まず1日あたりの金額を以下の計算式で算出し、休んだ日(給与が支給さない日)の日数を乗じた額となります。


出産手当金の1日あたりの金額 = 支給開始日以前の継続した12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3


(ここでの支給開始日とは、「最初に出産手当金が支給された日」となります。また、各月の標準報酬月額がわからないという方は、会社が保管している「標準報酬決定通知書」に記載されていますので、勤務先で確認してみてください。)

例えば、支給開始日以前12ヶ月の各月の標準報酬月額が「20万円×6ヶ月、25万円×6ヶ月」の場合の計算方法は次のとおりです。

出産手当金 支給額の計算方法

(20万円×6ヶ月+25万円×6ヶ月)÷12ヶ月÷30日×2/3


(20万円×6ヶ月+25万円×6ヶ月)÷12ヶ月=225,000円


225,000円÷30日=7,500円(このときに1の位を四捨五入します。)


7,500円×2/3=5,000円(小数点があれば、小数点第1位を四捨五入します。)


1日あたりの支給額は5,000円となります。



あとは、次の計算式に当てはめれば出産手金の支給額がわかります。

出産手当金 = 1日あたりの支給額 × 会社を休んだ日(給与が支給さない日)の日数


支給開始日以前の継続した期間が12ヶ月ない場合は?

入社して1年未満の場合などで、支給開始日以前の継続した期間が12ヶ月ない場合は、以下のいずれか少ない方の額を使用して計算します。


①支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額


②前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額
30万円(支給開始日が2019年4月1日以降の方)または、28万円(支給開始日が2019年3月31日までの方)


例えば、支給開始日が2019年4月1日以降の方で「支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額」が30万円を超える場合は、②の「30万円」を使用して「1日あたりの金額」を計算します。

計算式:出産手当金の1日あたりの金額 = 30万円 ÷ 30日 × 2/3


会社から給与が支給されている場合は?

出産のため、会社を休んだ日にも給与が支給される場合には、出産手当金の全額または一部が支給されません。


具体的には、会社から出産手当金の額より多い給与が支給された場合、出産手当金は支給されず、出産手当金の日額より少ない場合は出産手当金と給与の差額が支給されることになっています。


例えば、産休が有給休暇の場合や数ヶ月分の通勤手当がまとめて支給される場合などは、休んでいる期間に支給される給与としてその日割相当額が出産手当金から減額されることになります。

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出産手当金の申請方法

出産手当金の申請方法は「出産手当金支給申請書」(本人・医師・助産師記入欄)に必要事項を記入し、勤務先へ提出するだけです。

産休中の手当「出産手当金支給申請書」の書き方を記入例付きで解説!


あとは、会社の方で事業主記入欄に出勤状況等を記入してから協会けんぽへ提出することになります。



出産手当金は、産休期間中のすべてをまとめて産後に申請するケースが一般的ですが、産前分、産後分など複数回にわけて申請することもできますので、その際は勤務先に相談してみてください。

出産手当金の申請は、会社が記入する「事業主記入用欄」に、給与締日の翌日~締日までの出勤状況などを記入するため、1ヶ月(締日の翌日~締日)ごとの申請となります。

そのため、申請者本人が書類を提出しても(提出する時期によっては)会社は給与締日まで待ってから申請をすることになりますので、出産手当金の受給を急ぐ場合は注意してくださいね。



複数回にわけて申請する場合、事業主の証明は毎回必要ですが、医師または助産師の証明は1回の申請が出産後であり、証明によって出産日等が確認できたときは2回目以降の申請書への証明は省略することができます。

申請書を提出したあとは、支給額等が記載された「健康保険出産手当金支給決定通知書」が申請者の自宅へ送られてくることになっています。

Check!

退職後に申請する場合は「出産手当金支給申請書の事業主記入欄」は空欄のまま、直接本人が協会けんぽへ申請することになります。


産休後に育児休業を取得する場合は、ハローワークから「育児休業給付金」が支給されます!受給条件等こちらの記事にまとめていますので、よろしければ参考にしてみてください。

<育休中の給付金>ハローワーク育児休業給付金のもらい方を解説

最後に

出産手当金は、給与(12ヶ月の標準報酬月額の平均)の約67%が支給されるということで「少ないなぁ~」と思う方もいると思いますが、産休中は健康保険、厚生年金保険料がまるまる免除されることになりますので、実質的な支給額は以外に多くなると思います。

産休中の社会保険料は払わなくていい!免除される期間と申請方法を確認

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